(CNN) 米コンピューターサービス大手のIBM社が開発した人工知能「ワトソン」は2011年、クイズ番組「ジョパディ!」で人間のチャンピオンに勝利し、世界を驚かせた。
ワトソンは学習能力を持つコンピューターであり、数百万冊相当の書籍を「読む」ことにより、膨大な知識を収集・分析・創造できる。人工知能が読み込むテキストデータは今後も増える一方だ。
このような「読む機械」がもたらす革命は今後10年、私たちの生活をどう変えていくのだろうか。5つの未来を予想してみよう。
1.科学者を助ける
人工知能が科学的なテキストを読めるようになり、病気の治療や地球温暖化の解決に新たな突破口を開く。
アレン人工知能研究所で行われているプロジェクトでは、ワトソンに似たソフトウエアを開発中だ。コンピューターは、教科書から「学び」、質問し、結論を引き出せるようになるだろう。科学者を大いに助けるはずだ。
2.質問に答える
モバイル端末に質問すると、簡潔にして要を得た回答がその場で返ってくるようになる。
アップル社の「Siri」やグーグル社の「Now」のようなプログラムは既に、簡単な質問に回答できる。コンピューターに回答可能な範囲は、今後10年で飛躍的に拡大するだろう。データベース化された既存の知識だけでなく、インターネット上の情報も新たに抽出・合成した上で、的確な答えを返すのである。
3.ネット通販のコンシェルジェになる
人工知能が自動コンシェルジェの役割を果たし、消費者の助けとなる。
個人の趣味嗜好を把握した上で、インターネット上のすべての評判を読み込み、最適な商品を推薦するのである。静かなホテルを探したい場合、現状では自分で多種多様なサイトを吟味しなくてはならず、数時間かかってしまう。コンピューターがすべての評価を自動的に読み込み、分析することで、本当に1クリックで自分にぴったりの商品を買えるようになるだろう。
4.医療アシスタントとして活躍する
病院で診察を受けたその場で、あるいは自宅に居ながらにして、「セカンド・オピニオン」を聞くことができるようになる。
医学は絶えず発展しており、最先端の研究についていくのは医師にも難しい。コンピューターがアシスタントとして医師を助けることで、薬の危険な副作用などを警告できるようになるだろう。
5.リアルタイムの統計をはじき出す
10年以内に、保健や経済に関して、信頼にたる統計をリアルタイムで入手できるようなる。現状、病気のパンデミック(大流行)や経済情勢については、事後的に知るより他ない。
さまざまな大学で現在、食中毒の発生の監視をはじめ、雇用統計やインフレ率についての研究が進められている。近い将来、政府発表と同程度のデータが即座に手に入るようになるだろう。
私たちは最近、シアトルにアレン人工知能研究所(AI2)を開設したばかりだ。「読む機械」に関する研究開発が主な目的だ。今後10年以内に、「ビッグ・テキスト」から得られた情報が、いつどこでも入手できるようになるだろう。「読む機械」が革命を起こす日は、もうすぐそこだ。
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本記事は、ポール・ガードナー・アレン氏とオレン・エツィオーニ氏が共同で寄稿したものです。アレン氏は、米マイクロソフト社の共同創業者で、アレン人工知能研究所の設立者。エツィオーニ氏は、アレン人工知能研究所のエグゼクティブディレクターを務める。記事における意見や見解はすべて両氏によるものです。