米サンフランシスコで深まる格差対立、グーグルバスが露呈

大手ハイテク企業の進出により通勤などで摩擦が生じているという

2013.12.16 Mon posted at 16:52 JST

サンフランシスコ(CNN) 米サンフランシスコに住むハイテク大手の従業員と昔ながらの住民との間で、所得格差を巡る対立が深まっている。グーグルの通勤バスに対する抗議運動で、その対立が浮き彫りになった。

非難の矢面に立たされたのは、サンフランシスコ市内を巡回する高級バス。グーグルやフェイスブック、アップル、ヤフーといったハイテク大手がエアコンの効いた無線LAN完備の快適なバスを運行し、自社の従業員を勤務先に送り届けている。

これに対してグーグルのバス停でこのほど抗議集会が開かれ、抗議の横断幕を掲げた参加者が集まった。現場を撮影した映像には、グーグル従業員のように見える人物が、「自分が暮らせる街に行けばいい。ここは、ゆとりがあってふさわしい人たちのための街だ」と怒鳴る場面がある。

ただしこのグーグル従業員は、反格差運動を展開している活動家のマックス・アルパー氏が扮する偽物だった。同氏はこの映像について、「市の現状を見せつけるための政治劇」と形容する。

バス通勤は渋滞緩和につながるとの見方もある

グーグルバスを巡っては、自転車用レーンをふさぐなどして交通の妨げになり、公共バスのバス停を占拠しているなどの批判が出ていた。企業が専用バスにかける金があるなら、公共交通機関の改善のために貢献すべきだとの声もある。

カリフォルニア州の公共政策研究機関などの調査によると、サンフランシスコの住民に占める貧困層の割合は23.4%。ハイテク大手の従業員でない限り、通勤には老朽化した公共バスやトロリーバス、列車などを利用するほかない。

家賃の上昇に伴って市内に住み続けられなった住民は、郊外に追いやられてますます公共交通機関への依存度を強めている。

もっとも、バスにはマイカー通勤の交通量を減らして渋滞や公害を防ぐ効果もある。「問題はバスにあるのではなく、公共交通機関の不備や、ハイテク企業の多くが公共交通手段のない郊外に位置していることにある」と専門家は指摘する。

問題は交通機関だけにとどまらない。高給取りのハイテク企業従業員の流入により、サンフランシスコの平均家賃は3414ドル(約35万円)に跳ね上がり、住宅価格は過去3年で22%上昇した。

中流層や労働者階級層で構成されていた住民が、新興の富裕層に取って代わられることを危惧する声もある。

ニューヨーク・タイムズ紙は、「看護師や教員、アーティスト、ウエーター、バス運転手、警官、ミュージシャン、作家、高齢者の住民がいない街は、単一文化の不毛な町だ」という寄稿を掲載した。

一方で、グーグルバスに対する抗議活動の数日後には、シリコンバレーの起業家がホームレスの多さを嘆くコメントをフェイスブックに投稿して物議をかもしている。この起業家は結局、投稿を削除して謝罪する羽目になった。

対立が深まる中で、グーグルバスは最も目に見えやすい標的として非難の的になったのかもしれない。だが、たとえこのバスがなくなったとしても、問題は解決しそうにない。

専門家は解決に向けた方策として、ハイテク企業を公共交通機関の近くに移転させることや、市が公共交通機関の改善に乗り出すことなどを提案している。

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