母親が娘を売る――カンボジア児童売春の実態

2013.12.12 Thu posted at 10:35 JST

プノンペン(CNN) 児童買春が横行するカンボジアで、「売春村」と呼ばれるプノンペン近郊の貧しい漁村、スワイパーをCNNの取材班が訪ねた。10代前半の子どもを性産業の闇へ送り出しているのは、貧しさに耐えかねた母親たちだった。

スワイパー村の少女、キエウさん(14)は12歳の時、病院に連れて行かれて検査を受けた。医師が発行した「処女証明書」とともにホテルへ回され、カンボジア人の男に2日間強姦された。

心に傷を負って帰宅したキエウさんを、母親はその後も繰り返し売春宿での「仕事」に送り出した。相手はタイやカンボジアの男たちで、キエウさんがまだ幼いことを承知していたという。次は半年間の仕事に出されると知った時、キエウさんは家から逃げ出した。

母親のネオウンさんはCNN取材班とのインタビューで、「娘を売るのは心が痛んだが、どうしようもなかった」「借金のせいでそうするしかなかった」と話した。

父親が結核で倒れ、家業の養殖が続けられなくなった。高利貸しに借りた200ドル(約2万円)は、あっという間に9000ドル余りの借金に膨れ上がった。キエウさんが最初の男から受け取った500ドルを返済にあてても、到底足りる額ではなかった。

キエウさんは現在、児童買春の犠牲になった子どもたちを支援する団体、アガペ・インターナショナル・ミッションズ(AIM)の保護施設で暮らす。施設にはわずか4歳の女児もいる。団体を率いる米国人の元牧師、ドン・ブルースター氏(59)はスワイパー村の実情を知り、3年前に妻のブリジットさんとともにここへ移り住んだ。

「この村は小児性愛者が幼い少女を求めてやって来る場所として、世界中に名を知られている」「私たちがここに住み始めた当時、8~12歳の子どもはひとり残らず売り飛ばされていた」と、ブルースターさんは話す。地元の少年少女だけでなく、農村部や隣国ベトナムからも、子どもたちを乗せた車が集まってきた。

多くの少女たちが売春業者に売られる状況は今もあまり変わっていない。村では最近取り締まりが強化されたが、カラオケ・バーを装った売春宿が多数出現するなど、闇の営業が増えるばかりだ。

国連児童基金(ユニセフ)の推計によると、カンボジアの性労働者4万~10万人のうち、約3分の1を子どもが占めているという。その背景には警察の権限の弱さや売春業者との癒着、貧困問題などがあると、専門家らは指摘する。

トーハさんは少女たちの力になるためにソーシャルワーカーを目指すと語る

同国では1日の生活費が2ドルに満たない貧困層が人口の約半数を占める。スワイパー村は特に貧しく、大半の世帯は1日1ドル以下で生活している。船で暮らす水上生活者も多い。

キエウさんの近くに住む親類の一家は嵐で家が損壊し、養殖場の魚も失った。高利貸しからの借金約6000ドルを抱え、取り立てにおびえる毎日だった。娘のセファクさんは13歳で医師の証明を受け、プノンペン市内のホテルで3晩、中国人の男の相手をさせられた。セファクさんの母親はこの男から800ドルの報酬を受け取った。

セファクさん宅の近所で育ったトーハさんは、8人きょうだいの2番目だ。14歳の時、証明書とともにホテルへ送り出された。帰宅後にその相手から呼び出しの電話がかかってくるようになった。母親はこれに応じるよう命じたが、トーハさんはバスルームに駆け込んで手首を切った。友人がドアを破って助けてくれた。

トーハさんはその後送られた同国南部の売春宿で電話を見つけ、友人を通してブルースター氏に助けを求めた。AIMは警察の協力を得てトーハさんの救出を計画する。ところが警察は宿のオーナーと通じていたとみられ、トーハさんたちは直前に別の場所へ移された。トーハさんはすぐにブルースター氏に連絡し、救出チームはこれを手掛かりに無事救出を成功させた。後日、トーハさんの証言は宿の管理者夫妻の訴追につながり、夫妻には有罪判決が下された。

AIMに保護された少女や母親たちは、欧米向けのブレスレットを作る工場で働いている。キエウさんは美容師、セファクさんは教師になるのが夢だ。

トーハさんは今も母親と連絡を取り、家族に仕送りもしている。同じような苦しみを味わった少女たちの力になるためにソーシャルワーカーを目指すという。

少女たちはこうした状況を広く知ってもらいたいと話し、CNNが名前を公開することに同意した。母親たちは「周囲では普通のことだった」と話す一方、「もう2度とあんなことはしない」と口をそろえた。

カンボジア児童売春の実態

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