(CNN) スコットランド人の写真家デビッド・ヤロウ氏が撮る野生動物写真の大きな特徴は、その独特の視点だ。普段見られない角度から撮られた動物の写真は、何時間にも及ぶ調査と綿密な計画、そして現場での試行錯誤の末にようやく手にした努力の結晶だ。CNNは、最近香港で開催されたヤロウ氏の写真展で、本人にインタビューを行った。
CNN:現場で最もうれしかった経験は何ですか。
ヤロウ氏:野生動物は、それまで見たこともないような姿を撮らないとつまらない写真になってしまいます。
私はこのサメの写真を撮るのに、ケープタウンのボートデッキで30時間待ちました。サメがいつ海面に出てくるかを予想するのは不可能なので、アシカの赤ん坊に焦点を合わせ、サメもそれを見ていてくれることを願うしかありません。
サメは海が穏やかな時しか海面に現れません。また彼らが海面に姿を見せるのは日の出後1時間のみで、しかも7月のケープタウン沖でしか見られません。最初の数日は何も起きませんでした。しかし、絶対にシャッターチャンスがくると信じ、決してあきらめないことが重要です。
CNN:思わず見入ってしまう雌ライオンの写真がありますね。
ヤロウ氏:この写真も撮るのにかなり苦労しました。カメラケースに男性用化粧品を塗ったら、彼女の方からカメラに近寄ってきました。
この写真展で最も重要な写真はサイの写真でしょう。サイの下あごは大変面白い形をしているのですが、下あごが見える角度からサイを撮ることはないので、普段は見られません。サイをこの角度から撮るために、私はカメラを水たまりにセットしました。そして何日も失敗した後、ある日の夜10時にようやく撮影に成功しました。
CNN:野生動物と遭遇して恐怖を感じたことはありますか。
ヤロウ氏:一度だけ、アラスカで熊と遭遇した時に恐怖を感じました。
単独行動は控えるべきですが、当時私は一人でした。この時出会ったのは大きなハイイログマでした。しかし幸い熊はサケを食べてきた帰りで、空腹ではなかったので助かりました。
熊と遭遇したら、逃げずに語り掛けろと言われます。この時は恐怖で心臓が高鳴り、話すのが難しい状況でしたが、思い切って「やあ熊くん、元気かい」と話し掛けました。すると熊は一瞬私を見た後、立ち去りました。
CNN:ヤロウさんにとって1年で撮影に最適な時期はいつですか。
ヤロウ氏:それは何を撮るかによります。アフリカなら10月がいいですね。乾季が終わり、雷雲をバックに写真が撮れます。写真を撮る時に青空は好ましくありません。青空はつまらない。青空の下ではこのドラマチックな光のショットは撮れません。
北極は寒さが多少和らぐ5月と6月に行きます。しかし決して寒くないわけではなく、その時期でも凍傷になります。それでも他の月に比べればましです。
日本は1月に行きます。ニホンザルを撮りにね。
CNN:使用しているカメラの機種を教えてください。
ヤロウ氏:ニコンのD3SとD800です。
CNN:撮影はお一人で行かれるのですか。
ヤロウ氏:一人です。私が出掛ける時期、場所に行きたがる人はいません。私が行きたい時は雨の時、行きたい場所は誰もいない場所ですから。
CNN:撮りたい写真が撮れるまでどのくらい時間がかかりますか。
ヤロウ氏:何の準備もなくただ日曜日に来て月曜日に帰るのは無理です。事前にあらゆる調査を行い、撮影対象の動物の習慣や行動を把握した上で、日曜日に現場に到着し、木曜日までにいい写真が撮れれば上出来です。
CNN:サファリにお勧めの場所はどこですか。
ヤロウ氏:値段を見れば分かりますよ。私が好きなのはボツワナ、ケニア、ザンビア、ナミビアです。南アフリカはお勧めしません。私は写真撮影が目的なので、車外に出られないサファリパークには行きたくありません。車の中にいたらいいアングルから写真は撮れませんからね。