アジアで拡大する中流階級――空前の繁栄は目前に

2013.12.31 Tue posted at 18:26 JST

(CNN) アジア地域における中流階級の拡大は驚異的だ。世界経済フォーラム(WEF)のグローバル・アジェンダ会議は、アジアでの中流階級の拡大が「2014年の世界の10大トレンド」の1つになると考えている。

アジアの中流階級は現在、5億人規模だが、これが2020年までには17億5000万人と7年間で3倍の規模へと急拡大しそうだ。こういったことはこれまでに例がなく、歴史上、最も大きな地殻変動の1つとなるかもしれない。

アジアの人々が子どもたちの未来を明るいものととらえていることに不思議はない。調査機関ピューによれば、調査を行った中国人の82%は、子どもたちが将来、親世代よりも経済的に恵まれると考えているという。

アジアの地域社会が今、このように成功しつつあるのは、重要な改革について遂に理解し、吸収し、実行し始めたからだ。重要な改革とはすなわち、自由主義経済や科学技術の習得、プラグマティズムの文化であり、実力主義や平和の文化、法の支配、そしてもちろん、教育だ。

アジア全体で急激に生活水準が上がり、いたるところから貧困が消えつつある。例えば、中国では、市場の改革に着手して以来、絶対的貧困から6億人以上の人々が抜け出した。過去数世紀に見られたよりも、はるかに大幅な生活水準の改善がアジア地域で進むだろう。そして、さらに多くの恩恵が生まれるだろう。

こうした変化によって波及する重要な好影響のひとつは地域内の紛争の減少だ。

アジア地域はまだ、西欧が到達した、戦争の可能性がゼロという素晴らしい水準には達していない。しかし、伝統的には戦争の可能性を減らすことにつながる中産階級の拡大によって、そうした方向へ進んでいるといえるだろう。

全てが朗報というわけではない。直面する最大の課題は、これら全てが環境に影響するということだ。

もし、アジアで拡大した中流階級の全員が西欧のモデルを通じ、西欧の生活水準を切望すれば、地球環境にかかる負担は破滅的なものとなるだろう。

米国の電力消費量は2010年に1人当たり1万3395キロワット時に達した一方で、中国とインドはそれぞれ、同2944キロワット時と同626キロワット時だった。中国とインドは現在でも米国の3倍を超える人口を抱えている。しかし、1人当たりの電力消費量はごくわずかだ。

アジアにおける中流階級の拡大を押しとどめることが出来ないのは明白であり、そうであれば、こうした社会が環境に与える影響について、より責任を持つようになることが望まれる。

アジアの指導層は、この領域でなすべきことがあることは理解している。しかし、解決策という意味では、先進国が途上国に対して模範を示して導くことも重要だ。これは、長期的な政策を考える人たちにとって大きな挑戦だ。

もし、中国のような国に、地球環境に対して注意を払う責任ある利害関係者として台頭してきてほしいと望むなら、そのやり方を言葉ではなく行動で示さなくてはならない。

この大きな流れにアジアの中流階級が寄与できるとすれば、その方法のひとつは、科学技術分野に大量の「脳力」を送り込むことだろう。

日本のエネルギー効率の水準は中国の10倍だ。だから、もし中国が教訓から学ぶことが出来れば、拡大する中流階級は環境負荷の少ない科学技術の研究といった分野に貢献できるだろう。資源の利用を抑制しながら、より大きな経済成長を生み出すことにつながるかもしれない。

だから、アドバイスは簡単だ。特にアジアで顕著な中流階級の拡大という世界的な流れを歓迎すべきだ。その大陸に住む人々の生活水準は10年にわたり上昇し、過去何世紀も享受してこなかった水準の平和と繁栄を経験することになるだろう。環境問題などの課題を克服することが出来れば、 繁栄が何年にもわたって続くことに疑問はないだろう。

本記事は、世界経済フォーラム(WEF)の「中国に関するグローバル・アジェンダ会議」のメンバーであるキショア・マブバニ氏によるものです。WEFのリポートから採録しました。記事における意見や見解はすべてマブバニ氏個人のものです。

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