苦情投稿は「規約違反」、通販サイトから36万円請求 米

ネット通販サイトでの不快な経験を投稿サイトに書き込んだところトラブルに=KUTV提供

2013.12.03 Tue posted at 19:34 JST

(CNN) 米ユタ州に住む夫婦が、ネット通販サイトでの不快な経験についての投稿を巡ってこのサイトから3500ドル(約36万円)の違約金を要求され、信用情報機関に通報されるトラブルに巻き込まれた。

発端は、同州ソルトレークシティーに住むジョン・パーマーさんが2008年、「KlearGear.com」という通販サイトで妻のジェンさんのためにクリスマスプレゼントを買ったことだった。注文した商品は届かず、30日後に決済サービスのペイパルから連絡があり、パーマーさんの口座に代金が返金され、購入は自動的にキャンセルになったという。

ジェンさんはKlearGear.comに何度も電話した末に、同サイトについての論評を不正報告サイトの「ripoffreport.com」に投稿し、「人間の担当者と接触できる手段が一切存在しない。どの電話も通じない」と書き込んだ。

KlearGear.comからと思われる電子メールが届いたのは、それから3年以上たってからだった。ripoffreport.comへの投稿を72時間以内に取り消さなければ、3500ドルの違約金を要求するという内容だった。

違約金請求の根拠とされたのは、同サイトの利用条件として、「KlearGear.comに悪影響を及ぼすような一切の行為を禁じる」と規定した誹謗(ひぼう)中傷禁止条項だった。パーマーさんは、2008年の契約書面を根拠に、この条項が追加されたのは自分たちが商品を購入した後だと訴えている。

違約金請求の根拠とされたのは誹謗(ひぼう)中傷禁止条項だった=KUTV提供

法律専門家によると、自社を守る目的でこの種の文言を細部に盛り込む企業は増えているという。ただしKlearGear.comの利用規約は不当であり、裁判を起こせば退けられる公算が大きいと指摘する専門家もいる。

パーマーさんはripoffreport.comへの投稿を削除しようとしたが、同サイトは投稿削除の条件として、相手の企業が2000ドルを払って「調停」に応じることを義務付けていた。KlearGear.comはそれを拒み投稿は削除されず、パーマーさんは3500ドルの違約金を請求された。

ジェンさんによると、違約金の不払いが信用情報機関に通報され、以後はローンなどの金融案件が承認されにくくなったという。

CNNはメールや電話でKlearGear.comに取材しようとしたが、誰からも返事はなく、電話はすべてつながらなかった。CNNの系列局KUTVはメールで回答を受領。同サイトは売買契約の条項を理由に自己の立場を擁護し、パルマ―さんに対する投稿の削除要請については、脅しではなく違約金を避けるための助言だったと説明した。

米消費者保護団体のBBBも独自調査に乗り出し、同サイトについて注意を呼びかけている。

パーマーさんはこの問題を裁判に持ち込んで争う構えだ=KUTV提供

利用規約などに誹謗中傷禁止条項を盛り込んでいるのは同サイトにとどまらない。CNNの取材では、「不当な否定的感想」を含んだネット上の論評に対して1万ドル(約100万円)以下の違約金を科すと通告する貸し別荘業者のサイトも見つかった。

パーマーさんの問題が発覚したことをきっかけに、ネットではKlearGear.comに対する批判が殺到、同サイトのフェイスブックは閉鎖されたと伝えられている。

パーマーさんはこの問題を裁判に持ち込んで争う構えだ。

年末商戦を控えてこうした被害に遭わないために、ネットで買い物をする際はまず利用条件の細部に目を通し、相手が正当な企業かどうかを見極める必要があると複数の専門家が指摘する。もし批判的な論評を投稿する場合は正確性を期さなければ、たとえ誹謗中傷禁止条項がなかったとしても訴えられる可能性があると、ある専門家は助言している。

苦情投稿で通販サイトから違約金請求 米

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