インド・アナンド(CNN) 女性が子宮を提供して他人の子どもを産み対価を得る「代理母ビジネス」がインドでブームとなりつつある。インドは商業目的で代理母になることが認められている世界でも数少ない国の一つだ。
そんな代理母の1人であり、カナダ人夫婦のために男の子を出産したマドゥ・マクワンさんの元に感謝状が届いた。英語を読めないマクワンさんに請われ、記者が内容を訳し伝えた。マクワンさんは「もちろん嫌な気持ちです。9カ月も私のお腹の中にいたんですから。でも彼女には子どもが必要だし、私にはお金が必要なんです」と話す。
インド西部グジャラート州の小さな町アナンドは「ミルク・キャピタル」として知られる。あるホステルでは50人の代理母が共同生活を営んでおり、赤ちゃん1人につき8000米ドル(約80万円)を得ている。これは彼女たちにとって大金だ。
その1人、マンジュラと名乗る30歳の女性は代理母として2度目となる子どもを身ごもっていた。最初の代理出産で得たお金では家を建てた。再びホステルにやって来たのは、実の娘の教育費を払い、嫁入りさせるためだ。
出産のための費用が安くてすむことや、代理母候補が豊富なことに加え、優秀な医師が多いことも、インドでのブームに拍車をかけている。。
このホステルの世話人は、ネヤナ・パテル医師。2004年以来、580組のカップルのため、700人近くの赤ちゃんの代理出産を手がけてきた。
パテル医師は「代理母になることで夢のような生活を手にできる。そうでもしなければ彼女たちは家族のためのお金を稼げないし、家を持つことも、子どもを教育することもできない。カップルは代理母の助けが無ければ子どもを持つことができない。結果的に、1人の赤ちゃんがこの世に生を受けるのは、美しいこと」と話す。
インド当局はこの産業を規制すべく動きだしている。同性カップルやひとり親が代理母を雇うことはすでに禁止されている。母親の年齢も、21~35歳に制限される見通しだ。
代理出産を手がけるクリニックを「赤ちゃん製造工場」として批判するむきもある。女性人権活動家であり、ニューデリーに拠点を置く非営利組織「社会調査センター」のディレクターを務めるランジャナ・クマリ氏がその1人だ。商業化によって女性が金銭的に搾取されていると警鐘を鳴らす。
同調査センターによると、実際にクリニックから代理母に支払われる報酬は8000ドルをはるかに下回る。800ドル足らずの場合もあるようで、現実には言われているほどもうかる仕事ではないという。
クマリ氏は「もし本当に子どもが欲しいのなら、本人の友人や親戚が子宮を提供すべきだ。なぜ貧しい女性でなければいけないのか。これでは臓器売買と変わらない」と指摘する。
代理出産に向けられる地元民の視線も厳しい。とくに高齢の村民は快く思っていないようだ。しかし先のマンジュラさんは「私個人にとっては、パテル医師は良いことをしてくれた」と話す。
冒頭の代理母マドゥ・マクワンさんの運命も、このサービスのおかげで一変した。カナダ人夫婦に対するメッセージを求められると、彼女はこう話した。「サンキューと言いたい。これ以外の英語はわかりませんから!」
そして、「やっと自分の人生を歩むチャンスをつかんだんです。神様が優しくしてくださいました」と言って涙を拭った。
インドで流行、代理母ビジネス