尖閣諸島巡る日中対立、解決の道遠く

尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る日中の争いが続いている

2013.11.03 Sun posted at 17:28 JST

東京(CNN) 東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡って日本と中国の対立が続いている。どちらも引き下がろうとしない「チキンレース」に、終わりが見える気配はない。

幸いなことに争いは非難の応酬にとどまっているものの、双方の船舶や戦闘機が不穏な動きを繰り返すなど、一触即発の状態が続く。

両国は10月23日、日中平和友好条約の発効から35周年の節目を迎えた。祝賀ムードが高まらなかったのも無理はないが、これは緊張緩和への道を探る良い機会かもしれない。

対話を後押しするためには、日本の安倍晋三首相と中国の習近平(シーチンピン)国家主席の首脳会談を設定するなどして双方の納得できる着地点を見つける必要がある。

だが非難の応酬を鎮め、首脳会談を開くまでの道のりは遠そうだ。

習主席は尖閣問題での日本の態度を攻撃的だと非難し、10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)では韓国の朴槿恵(パククネ)大統領とともに安倍首相との首脳会談を断った。安倍首相は靖国神社参拝を見送ることで歩み寄りの姿勢を示したが、中国側は強硬姿勢を崩さない。首相は年内に参拝する見通しとされ、こう着状態からの出口は遠のくばかりだ。

尖閣問題はナショナリズムの象徴としての意味合いを強め、チキンレースの様相を呈している。最近では9月に中国の無人機が尖閣諸島上空を飛行したことに対し、日本政府が「領空を侵犯した無人機が警告を無視した場合は撃墜を含めた強制措置を取る」との方針を示した。

中国側は、日本が撃墜などの強制措置を取ればそれは重大な挑発であり、一種の戦争行為だと強い反発を示した。

同じ日に安倍首相は米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、日本は今後さらに、安全保障分野でのリーダーシップや地域への影響力を発揮していくと表明。「中国が法の支配でなく、力による現状変更を試みようとしていることに対して懸念がある」と述べ、中国がその道を取れば平和的な台頭はできなくなると警告した。

安倍首相は自身の経済政策「アベノミクス」を背景に、日本がアジアでのリーダーシップを強め、中国に対抗すべきだと主張する。これに対して中国は、地域の覇権を握るのは自分たちだと反論している。

米国は「冷静に対処するのが得策」という立場だ。岩山を巡って中国と戦争するような事態はもちろん望んでいない。ただ、オバマ米大統領が打ち出しているアジア重視戦略とは、つまりは対中封じ込め戦略のように見える。環太平洋経済連携協定(TPP)からの中国排除もその一環と考えられる。

日本の非営利シンクタンク、言論NPOが毎年実施している日中共同世論調査によると、両国の相手国に対する印象は今夏、良くないとの回答が双方とも90%を超え、2005年の調査開始以来最悪を記録した。両国の指導者はこれを警鐘と受け止めて、今こそ真のリーダーシップを示すべきだ。

言論NPOは10月26~27日、北京で日中両国の有識者や当局者、政治家らによるフォーラムを開催した。福田康夫元首相は両国の指導者に対し、独善に陥って先に進めなくなる事態は避けるべきだと説いた。また、日本は「歴史問題」を乗り越えて尊厳を取り戻し、国際社会の期待に応えなければならないと呼び掛けた。

元首相はさらに、日中がいくつもの問題で協調の必要に迫られるなか、両国は今こそ、違いを乗り越えて合意点を見いだすため行動を起こすべきだと訴えた。

賢明な助言だが、果たして指導者らの耳には届いたのだろうか。

本記事はテンプル大学ジャパンキャンパス・アジア研究学科のジェフリー・キングストン教授によるものです。記事における意見や見解はすべてキングストン氏個人のものです。

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