(CNN) 村のテントにはその日も、1日の仕事を終えた人たちが集まって来て談笑していた。野菜売りや材木商、鉱山労働者など職業はさまざまだが、誰もが妻や子ども、両親などの家族持ちだった。
アフガニスタンと国境を接するパキスタンの北ワジリスタン地域。武装勢力の拠点が集中する地でもある。この日は無人機4機が夜空を旋回していた。
突然、無人機の発射したミサイルがテントを直撃した。この攻撃で8人が死亡。数分後、被害者を助けようと村の人たちが近付いたところを無人機が再び攻撃し、犠牲者は18人に増えた。中には14歳の少年も含まれていた。
負傷者は8歳の少女も含めて22人に上った。
「バラバラになった遺体があちこちに散乱していた。頭のない遺体や手足のない遺体もあった」。当時近くで祈りをささげていた地元住民は振り返る。
2012年7月に起きたこの事件についての証言は、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが22日に発表した米軍無人機のパキスタン攻撃に関する報告書に盛り込まれた。
報告書では、12年1月から13年9月にかけて米国が北ワジリスタン地域で行ったとされる45回の無人機攻撃のうちの9回について、詳細を伝えている。
それによると、攻撃で死亡したのは国際テロ組織アルカイダやタリバーンなどのメンバーばかりではなく、ごく普通の民間人が犠牲になったケースもあるという。
12年10月には、野菜を収穫していた68歳の女性が孫たちの目の前で吹き飛ばされ、孫も数人が負傷した。
アムネスティ・インターナショナルは、「こうした攻撃の結果として行われた非合法殺人は、司法によらない処刑、あるいは戦争犯罪に該当する可能性もある」として深刻な懸念を表明している。
報告書は、訪米中のパキスタンのシャリフ首相とオバマ米大統領の会談を翌日に控えたタイミングで公表された。無人機攻撃を国際法に従わせるための対応を促し、報告書に挙げたケースについての中立的な立場からの調査、人権違反を犯した関係者の訴追、犠牲者の遺族への補償などを求めている。
シャリフ首相は米首都ワシントンで22日、「この問題は二国間関係における大きな障害となっている。無人機攻撃は終わらせる必要がある」と強調した。
パキスタン外務省報道官によると、同国で無人機に対する怒りが強まる中、シャリフ首相はこれまでにも米国に対して無人機攻撃をやめるよう求めており、23日のオバマ大統領との会談でも改めてこの問題を取り上げる意向だという。
これとは別に、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチも22日、米国がイエメンで行っている無人機攻撃についての報告書を公表した。09年から13年にかけての攻撃で死亡した82人のうち、少なくとも57人は民間人だったとしている。
同団体の研究員は、報告書で取り上げた中の少なくとも2件は明らかな国際法違反に該当し、4件は国際法違反の可能性があると指摘した。
これに対してカーニー米大統領報道官は22日の記者会見で、「米国が国際法に違反しているという報告書の主張には強く異議を唱える」と反論。「対テロ活動が法に従って行われるよう、多大な配慮をしている」と強調した。
米無人機攻撃は「国際法違反」 人権団体