香港(CNNMoney) 中国は現在、約50頭のジャイアントパンダを世界各国の動物園に貸し出している。ここ数年の貸与はほぼ例外なく、中国との間で大型の貿易や投資案件を成立させた国が対象だ。
例えば中国へのエネルギー技術供給で合意した国や、原子炉用ウランの供給国、自由貿易協定を結んだ相手国が、いずれもパンダを受け取っている。
貿易相手国が中国に対価を払ってまでパンダを借り受けるのは、人気者のパンダがいれば動物園の来場者を増やせるためだ。
「パンダは中国に貴重な資源や技術を供給する国に貸与されており、『グァンシー』、つまり信頼や永続性を特徴とする深い貿易関係の構築を中国が意図している象徴でもある」。英オックスフォード大学の研究チームは最近の論文でそう解説した。
例えばスコットランドは2011年、サーモンと石油化学および再生可能エネルギー技術の供給に関する巨額の案件を成立させ、引き換えにエディンバラ動物園がパンダのつがいを貸与された。
カナダとフランスがウラン輸出に関する巨額案件に署名した時期は、両国がパンダを貸与された時期と一致する。オーストラリアも06年に中国へのウラン供給で合意し、09年にパンダ2頭を受け取った。
中国では経済成長に伴って資源需要が高まっており、パンダと資源との交換は今後も増える見通しだ。パンダに対する各国の関心も尽きそうにない。
ただし中国の主要貿易相手国がすべてパンダを受け取れるわけではない。オックスフォード大学の専門家は、「中国はパンダの希少性を保ち、価値を低下させないために、貸与する国を慎重に選ぶ必要がある」と指摘する。
有利な条件を引き出す目的で戦略的にパンダを使う現象は、今に始まったことではない。
毛沢東主席の時代は、旧ソ連や北朝鮮、米国、英国の指導者にパンダが贈呈された。1972~74年に「親善大使」となったパンダは24頭に上る。
一方、パンダが外交に果たす役割が強まると同時に、パンダビジネスの存在感も高まった。
保護団体の関係者によると、中国は経済開放を模索していた1980年代、ドルが必要になり、パンダを短期的に貸し出そうとする動きが盛んになった。つがいのパンダのレンタル料は月間10万ドルだったという。
しかし保護団体などの反発が高まったため、貸与期間を延長し、研究に重点を置くようになった。
現在でもパンダを貸与された動物園は中国に対価を払っており、契約にもよるが、金額はつがいのパンダで年間約100万ドルにもなる。飼育代も高くつき、時には保護プロジェクトのために追加負担を強いられる。
さらにパンダは別の方面で使われることもある。
米国は2010年、オバマ大統領が中国の反対を押し切ってチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談した後、米国生まれのパンダ2頭を失った。パンダの赤ちゃんは出生地を問わず中国に所有権があり、中国は即座にこの2頭を回収したのだった。
ボールを離したくない赤ちゃんパンダ