(CNN) 17世紀に発達したといわれる日本の伝統の折り紙が、世界各地でパッケージデザインや数学などの世界に影響を与えている。最近では折り紙を応用した折りたたみ式カヤックも登場した。
「オル・カヤック」と名付けたこの作品は、米カリフォルニア州のデザイナー、アントン・ウィリス氏が制作した。1枚のポリエチレンシートでできた船体は、パドルも含めて全体を折りたたみ、大型スーツケースほどの大きさに収めることができる。車のトランクに入れて運んだり、自宅のクローゼットに収納することも可能だ。
ウィリス氏は、折り紙の科学について解説した雑誌記事に着想を得て、数年前に折りたたみ式カヤックの設計に着手。サンフランシスコのアパートに転居して、倉庫で組み立て作業を進めた。「折るという技術を使って新たに素晴らしいことをやっている人たちの記事を読み、紙のように折りたたむことができるカヤックを作れないかと思いついた」と同氏は話す。
材料の2層プラスチックは折り目を作って折りたたみやすくした。船体の上部にある唯一の継ぎ目は防水性のゴム製シールでふさいで浸水を防いでいる。開いた時の全長は約3.7メートル、幅は約60センチ。折りたたむと84センチ×74センチのコンパクトなサイズに納まる。
資金調達には一般から小口の出資を募るクラウドファンディングを利用し、初日で目標額に達したという。「キャンペーン開始当初の目標は8万ドル(約790万円)の調達だったが、5時間半でその目標を達成した。夢のような日だった」とウィリス氏は振り返る。
折りたたみ式の乗り物はこれまでにもさまざまな製品が開発されてきた。1979年に発明された折りたたみ式自転車「ブロンプトン」は、都市部での通勤などに利用する人に愛用されて世界的なヒット商品となった。一方、折りたたみ式スクーターの「レイザー」は一時的なブームを巻き起こしたものの、その後は売り上げが落ち込んだ。
折りたたみ式小型飛行機の「ICON」は、手ごろな大きさや価格を売り物に「飛行改革」を起こしたい考え。今年3月にスイスで開かれたジュネーブ自動車ショーには、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発にかかわった折りたたみ式自動車「ヒリコ」が登場した。年内には生産が開始される予定だ。
カヤックを折りたたむ様子を見る