(CNN) リビアのアリ・ジダン首相の報道担当者は10日、武装集団が同日未明、首都トリポリの高級ホテルで首相を拉致し、不明の場所へ連れ去ったと述べた。CNNに明らかにした。
誘拐の現場となったコリンティア・ホテルの従業員によると、首相は待機していた車列に連れ込まれた。この際、銃撃戦などの衝突は起きず、武装集団は礼を失した行動は取らなかったという。
民兵組織「Operations Room of Libya's Revolutionaries」が同首相は財政、行政上の汚職容疑に問われたため拘束したと明らかにした。同組織は内務省との関係が深いとされ、これまで多数の民兵組織の制御を試みたが失敗したという。各省は警備要員の確保などそれぞれ抱える事情に応じて各民兵組織と協力するのが実情となっている。
法務省はジダン首相に逮捕状は出ていないとして、今回の事件を誘拐と断定した。首相府は当初、交流サイト「フェイスブック」でジダン首相の拉致はうわさと否定したが、後になり誘拐犯に強要された上での説明だったと述べた。
リビア東部では民兵組織らが自治権拡大などを要求。同国の主要な外貨獲得源でもある原油生産にも大きな混乱が出ている。
リビアでは2011年8月、一部の欧米諸国による空爆などの支援を得た反体制派が強権政治を長年敷いてきたカダフィ政権を駆逐。ただ、これ以降、地域の部族などに根差した民兵組織が乱立して治安が悪化し、移行政府の統治の脅威ともなっていた。
ジダン政権は民主的に選ばれているが、閣僚の人選に反発する武装勢力が法務や外務など主要省庁を包囲し、圧力を加える事件も相次いでいる。
カダフィ政権崩壊に伴い、民兵組織に流出した大量の兵器の処理も課題となっている。リビア政府の情報機関当局は同国は国際テロ組織アルカイダが組織再編や世代交代を図る聖域と化しつつあるとの危機感も表明していた。