(CNN) 国連の潘基文(パンギムン)事務総長は16日、シリアの首都ダマスカス郊外で先月化学兵器が使用された疑いを巡る国連調査団の報告書を公表した。報告書では神経ガスのサリンが使われたと断定されたが、アサド政権と反体制派のどちらが使ったかについては見解が示されていない。
38ページにわたる報告書によれば、ダマスカス郊外グータにサリンを搭載した地対地ミサイルが撃ち込まれたことを示す明確な証拠が採取された。
調査団は現場の生存者や救急隊員からの聴き取り、髪や尿、血液、土壌などの試料採取など、大規模な調査を実施していた。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長は同日、国連安全保障理事会に結果を報告。シリアで化学兵器が使われたことに「疑念の余地はない」と述べた。また一般市民に対する化学兵器の使用としては、イラクの旧フセイン政権が東部ハラブジャでクルド人を虐殺した1988年以来の規模だったと強調。生物化学兵器の使用禁止を定めた25年のジュネーブ議定書などの国際法に反する「戦争犯罪だ」と非難した。
報告書によると、現場では攻撃前後に気温が下がった影響で空気が上から下へ流れ、ガスが市民の避難する建物の1階や地下室へ入り込んだために被害が拡大した。
ただ、調査団の任務に化学兵器使用の責任者を追及することは含まれていない。潘事務総長は、どちらの仕業だったかについて見解を述べなかった。
一方、国連安全保障理事会の議長国オーストラリアのクインラン国連大使は、報告書によって「政権側が化学兵器を使ったことが確認された」と主張。米国のパワー国連大使も、報告書は政権側による使用を示すものだと述べた。パワー大使は「アサド政権はサリンを保有しているが、反体制派が持っているとの証拠はない」「政権側の支配地域に入り込み、そこから反体制派の地域を攻撃するという行動を、反体制派が取るとは思えない」と述べた。
これに対してロシアのチュルキン国連大使は、反体制派の仕業だった可能性は否定できないと反論。反体制派が当時、ただちに被害を報告しなかったのはなぜかと問い掛けた。
シリア国連報告書、サリン使用を断定