(CNN) 米アップルが10日に発表したスマートフォン「iPhone(アイフォーン)5s」の新機能のなかで最もすばらしいもののひとつは指紋認証かもしれない。アップルのダン・リッチオ上級副社長はプロモーションビデオのなかで「指紋は最も優れたパスワードの1つだ。常に身につけていられて、全く同じものは2つとない」と語っている。
アップルの指紋認証システムは「タッチID」と名付けられ、ホームボタンに指を乗せるだけでパスワード入力の代わりに使うことができる。
指紋データは暗号化され、iPhone内部に保存される。リッチオ上級副社長は「他のソフトウエアからは利用できないし、アップルのサーバーに保存されることもない」と言う。
指紋認証を搭載した携帯電話は5sが初めてではない。2011年にはモトローラが導入したもののユーザーの利用率が伸びず、後継機種では搭載をやめた経緯がある。
それでも、セキュリティー認証に関する業界団体「ファスト・アイデンティティー・オンライン・アライアンス」のマイケル・バレット会長は近年の指紋認証技術について「全体的に品質が大きく向上した」と語る。
もちろん指紋認証は完璧ではない。バレット会長の妻は、指が乾燥してがさがさになったせいで指紋認証に失敗し、パソコンにログインできなかった経験があるという。
タッチIDはアップルのアプリ販売サービス「App Store」やコンテンツ販売サービス「iTunes」での決済にも使えるが、ネットショッピングでの利用が広がるとは考えにくい。
スマートフォンにおけるアップルの世界シェアは17%に満たず、アップル以外のネットストアが多額の投資をしてタッチIDに対応するとは思えないからだ。
コロンビア大学ビジネススクールのグローバル・ブランド・リーダーシップ・センターでエグゼクティブディレクターを務めるデービッド・ロジャース氏は「タッチIDは今のところ、ログインにかかる時間を数秒節約する機能にすぎない」と指摘。
クーラーやステレオといった家庭内の電子機器を操作するための端末として使えるようになれば革新的といえるとしながらも、「現時点ではそこまでには到達していない」と付け加えた。
iPhone5sの指紋認証機能