エジプト、衝突拡大で非常事態宣言

ムルシ前大統領派によるデモ隊。ムルシ氏の追放以降、激しい衝突が続いている

2013.08.15 Thu posted at 10:34 JST

カイロ(CNN) 14日に起きたエジプト治安部隊とムルシ前大統領支持派のデモ隊の衝突による死者は、民間人235人を含む少なくとも278人に上った。国営テレビがエジプト当局の話として伝えた。暫定政府のイブラヒム内相によれば、警察官も43人が死亡。ムバラク政権を倒した2年前の政変以来、最悪の事態となった。

国営テレビによると、暫定政府は同日、1カ月間の非常事態を宣言した。カイロやアレクサンドリア、ギザ、スエズなどの各地には、15日午前6時までの夜間外出禁止令が出されたが、この日も散発的な衝突が続いている。

国営テレビは15日、ムルシ氏支持派が外出禁止令を無視して警察や病院、政府庁舎などを襲撃していると伝えた。カイロやギザでは治安部隊の配備が強化され、証券取引所はこの日の取引を中止、銀行も閉店した。

ムルシ氏の出身母体、ムスリム同胞団を中心とする支持派は、軍が同氏を解任して以来、数万人がカイロで野営して抗議の座り込みを続けてきたが、14日に治安部隊が野営地の強制排除に乗り出した。

ムルシ氏支持派は、平和的な抗議デモに対して治安部隊が全面攻撃してきたと非難。一方、暫定政権側は治安部隊がムスリム同胞団に襲撃されたと述べるなど、双方の主張は真っ向から対立している。

ムルシ前大統領の復権を訴えるデモ参加者

暫定政府のベブラウィ首相は、安定を維持するためにやむを得ず行動に出たと述べ、反政府陣営の野営地には武器や砲弾があったと主張して、治安部隊の対応を称賛。「我々は正義に基づく民主主義を確立する」と力説した。

一方、国営テレビによると、世俗派を率いてきたエルバラダイ外務担当副大統領は14日、政府によるデモ隊の弾圧に抗議して辞表を提出した。

欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表は、エジプト治安部隊に自制を求めるとともに、暫定政権に対してできる限り早期に非常事態宣言を解除するよう促した。

米政府当局者によれば、今回の事態を受けて米国は、来月に予定していたエジプト軍との合同軍事演習を中止する検討に入った。ケリー米国務長官は14日、エジプト政府に対して「基本的人権の尊重」を求めると述べ、今回の事態に遺憾の意を表明。「暴力への道はさらなる混乱と経済の壊滅を招く」と指摘した。

暫定内閣発足後も各地で衝突が続いている

現地で取材に当たっていた外国の報道陣も衝突に巻き込まれ、英スカイニュースの報道カメラマン、ミック・ディーン氏が死亡したほか、ロイターのフォトジャーナリストが銃弾に当たって病院で手当てを受けている。

仮設救護所には血まみれの負傷者が運び込まれているが、目撃者はCNNの取材に対し、治安部隊が医師を銃で脅して追い払ったと証言した。

一方、イブラヒム内相は、武装したデモ隊が警察署や財務省の建物などの襲撃を試みていると語った。国営放送は、ムルシ氏支持派が国内各地でキリスト教会を襲撃したり、観光バスや警察車両に放火したりしたと伝えている。

エジプト治安部隊がデモ強制排除

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