窮状続くシリア難民、レバノン人の反感も増大

水を運ぶ少年。60万人以上がレバノンに逃れたという

2013.07.24 Wed posted at 16:37 JST

レバノン・ベッカ峡谷(CNN) シリアで長引く内戦の影響で、大量の難民が隣国レバノンに流入している。周辺地域は家賃の値上がりや賃金下落などの影響に見舞われ、レバノンの人たちはシリア難民に対して反感を募らせつつある。

レバノン・ベッカ峡谷のシリア難民キャンプで暮らすオマル君(8)は、内戦で破壊された故郷の町に戻って友人と再会したいと願い続けている。毎日学校に通い、宿題を片づけることだけ考えていればよかった日々は懐かしい過去になった。

オマル君は母親と14歳の兄と共に、近くの農場で卵を集める仕事の帰りに取材に応じてくれた。子どもたちが働いてわずかな稼ぎを得るほかに、家族が生き延びる手段はない。

仕事の厳しさに加え、同じ年頃のレバノンの少年たちに殴られ、「シリア人の畜生ども」とののしられたと話すオマル君の目は、涙でいっぱいになった。

厳しい現実にさらされている子どもたちは、一様に目の輝きを失って実際よりも年上に見える。笑顔はほとんど見られない。

15歳の少女は、小さなテントに10人で暮らしていると語り、「何とか生きているけれど、何もかも前とは違う」とつぶやいた。

テントを設営する避難民たち

取材に応じてくれたシリアの人たちは、自分たちの生活が激変してしまったことが信じられないと言い、生活苦に加えて差別にもさらされていると訴える。

40代の女性は、「おまえたちを皆殺しにしたアサド(シリア大統領)の手に祝福を。そうされて当然だ」と言い放たれ、大きなショックを受けたという。

国連の統計によれば、隣国レバノンに逃れたシリア難民は60万人以上に上る。しかしレバノンは人口約400万人の小さな国。シリア難民に対する怒りの感情が強まりつつあると、支援団体の関係者は危機感を強める。

人道支援団体ワールドビジョンのパトリシア・モアマー氏は、「内戦は3年目に入った。レバノンの人たちは、最初は非常に寛大だったが、今ではその負担を背負い切れなくなっている」と説明する。

「地域によっては家賃が5倍に跳ね上がったところもある。一方で賃金は大幅に下落した。シリア人は安い給料で働き、1件の家に何世帯もの家族が暮らす。難民を受け入れるレバノン社会にとっての負担の重さを誰もが感じている」(モアマー氏)

洗い物をする女性と子どもたち

ワールドビジョンでは、シリア難民とレバノン社会の両方に対する支援にもっと力を入れる必要があると呼びかける。

レバノン人の中には転居を余儀なくされた一家もいる。

ある男性は、シリア人の一家が家賃を2倍払うと申し出たため、自分たちは家主に追い出されたと話した。9歳の息子は「シリア人が僕たちの世界を奪った。僕たちには何も残っていない」と怒りをぶつける。

一方、父親は「シリア人を敵視はしない。難民は助けなければならない。ただ、政府には我々の面倒も見てほしい」と訴え、10代の長男を指して「息子まで働きに出なければならなくなった。ひどいことだ」と嘆いた。

長男に父親の言葉が聞こえた様子はなく、ただ疲れた様子で腰を下ろし、じっと前を見据えていた。その姿には、シリアの子どもたちと同じように、絶望感が漂っていた。

窮状が続くシリア難民

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