経済支える観光業に再度の打撃 エジプトの政情悪化

観光名所のひとつ、スフィンクス。政情不安が観光業への打撃となるとみられている

2013.07.07 Sun posted at 15:46 JST

(CNN) ムルシ前大統領を解任するエジプト軍のクーデター発生で、同国経済の主軸の1つである観光業が新たな打撃を受けるのは必至の情勢となっている。

ギザのピラミッド群の貴重な遺跡やナイル川、紅海沿いのリゾート地シャルムエルシェイクなどを抱えるエジプトは世界でも人気が高い観光大国。国連の世界観光機関(UNWTO)によると、同国観光業は労働人口の約10%を集め、昨年は100億米ドルの収益を上げた。現在の為替相場では約1兆100億円相当。

ただ、11年にムバラク元大統領を退任に追い込んだ大規模国民デモの多発などで、観光業界は大きな後退を強いられていた。外国人訪問客数などは10年の1400万人から昨年は1050万人に激減した。

今月1日にはザアゾウ観光相やアムル外相らの閣僚計6人が全国内で拡大するムルシ前大統領支持派と反対派の衝突を受け、辞表を提出した。観光行政を仕切る最高責任者が不在の状態となっている。

エジプト政情の悪化を受け、各国も渡航自粛勧告などを相次いで打ち出した。英国外務省は3日、必要不可欠な場合を除きエジプト旅行を控えるよう新たに勧告。ただ、騒乱発生の報告が少ない沿岸部の一部リゾート地は除外している。

タハリール広場に集まったデモ参加者

米国務省も不要不急なエジプト訪問や同国内の旅行中止を求める勧告を維持している。

権力を30年間握っていたムバラク旧政権崩壊でさらに混乱したエジプト経済の回復の足取りも遅い。昨年の経済成長率は2%で今年も同一水準が予想されている。しかし、ムバラク元大統領時代と比べれば半分以下の成長率となっている。

燃料不足や停電の頻発、食費高騰などに対する国民の不満は強い。ムバラク政権を打倒した民衆デモは経済成長の果実から締め出されているとの反発が起爆剤ともなっていた。国際労働機関(ILO)によると、エジプト総人口の4分の1の生活費は月50ドル以下で、若年層の約4分の1が失業している。

同国は財政危機にもある。中央銀行によると、今年5月末時点での外貨準備高は推定約160億米ドル。このうちの120億ドルはサウジアラビアやカタール、リビアなど中東の原油生産国からの資金援助分。これらの援助がなくなれば状況はさらに悪化する。

エジプトは過去2年間、50億ドルに近い資金供与をめぐって国際通貨基金(IMF)と交渉していたが、まだまとまっていない。国内企業首脳らはより包括的な国家指導部が誕生すればこの交渉を迅速に成立させることも可能と期待している。

エジプト観光業への影響は?

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