エジプト軍、ムルシ大統領の権限剥奪

2013.07.04 Thu posted at 10:07 JST

カイロ(CNN) エジプト軍トップのシシ国防相は3日夜、全土に向けたテレビ放送を通じ、憲法を停止して議会選挙を実施し、最高憲法裁判所のマンスール長官がムルシ大統領に代わって暫定大統領に就任すると発表した。

ムルシ大統領の支持母体「ムスリム同胞団」の広報は、ムルシ氏が大統領警護隊の本部で拘束されていると明らかにした。ムルシ氏は外部との接触を断たれ、誰も面会できない状態だという。大統領側近もほとんどが拘束されたとしている。

シシ国防相は、ムルシ氏が国民の目標を達成できず、軍の通告にも従わなかったと強調。マンスール氏は憲法令発布の権限を持ち、「強力で多様な政権を樹立」すると表明した。ムルシ大統領の権限剥奪(はくだつ)は、軍が国を守るために「歴史的責任」を果たしたものだと強調している。

一方、ムルシ大統領は衛星放送のアルジャジーラを通じて声明を流し、自分はエジプトの正統な大統領だと強調。「我々は自ら障壁を克服できる。これは国民の意思であり、取り消すことはできない」と訴えた。引き続き交渉と対話に応じる用意があると述べ、支持者には平和的なデモを行うよう呼びかけている。

アルジャジーラはこの声明を放映した直後にエジプトの放送局が襲撃され、スタッフ数人が拘束されたと伝えた。

ムスリム同胞団も、同団体の放送施設が封鎖されたとしている。国営通信などの報道によれば、同胞団の幹部2人が拘束され、警察がさらに300人の行方を追っているという。

シシ国防相の発表を受け、首都カイロ中心部のタハリール広場に集まっていた反大統領派は熱狂ムードに包まれ、花火が打ち上げられた。一方、ムルシ氏支持派は「打倒軍政」など抗議の声を上げている。

軍は発表を前に、首都の要所に部隊を配備してナイル川にかかる橋を封鎖し、ムルシ氏支持派が集まっていた広場を取り囲んでいた。

3日に全土で起きた衝突では、少なくとも8人が死亡、340人が負傷したと伝えられている。

ムルシ氏はムバラク政権がデモで崩壊したことを受け、2012年6月に実施された大統領選で同国で初めて民意によって大統領に選出された。しかし景気低迷が続いて治安も悪化、観光客や投資家が遠のいて、反対派はムルシ氏の強権的な姿勢に対して批判を強めていた。

反大統領派のデモ拡大を受けて軍は1日、ムルシ大統領に対し、3日夜を期限として改革を断行するよう迫っていた。

この通告期限が切れた直後にムルシ氏は交流サイトのフェイスブックに、クーデターが進行中だとする書き込みを投稿。「民主主義においては、現在のような状況の結果として、大統領が次の選挙に敗れるか、与党が次回選挙でつけを負うという結末しかない。それ以外はすべて暴民政治だ」と断じた。

これに対して野党議員は「断じて軍事クーデターではない。これは革命だ」と反論している。

エジプト軍、大統領の権限剥奪

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