香港(CNNMoney) 中米ニカラグアの議会は16日までに、香港系企業に対し太平洋とカリブ海、大西洋を結ぶ運河の建設や運営などの権限を50年間委ねることを承認した。事業計画には鉄道、2カ所での港湾、国際空港や原油パイプラインの建設も含む。
ただ、国際海路の要衝パナマ運河に対抗する巨大事業の実現を強く疑問視する見方が早くも出ている。400億米ドル(約3兆7600億円)ともされる巨額の運河建設費のねん出方法や新運河の最終ルートの選定などがまだ決まっていないためだ。
ルートについては、パナマ運河の3倍の距離になる可能性も取りざたされている。
また、ニカラグア議会から事業承認を得た香港企業「HKNDグループ」の組織構造や経営陣の陣容がほとんど知られていないことも懸念材料となっている。同企業には中国の通信企業が関与しているとされる。同社は取材申請に14日時点で応じていない。
ニカラグアでの新運河計画は、パナマ運河の将来的な収容能力の限界を見すえて浮上。パナマ運河では現在、拡張工事が進められているが、完工しても世界最大級のコンテナ船の通過は不可能と指摘されている。
ニカラグアの運河は幅をより広くし、今後20~30年間で予想される国際海運の増加を好機ととらえている。HKNDは同社サイトで、船舶の大きさに関する最近の傾向を踏まえてもニカラグアの運河が役立つ有望な市場があると主張した。
一方、ニカラグアで過去に計画された事業計画が、政治的な思惑や資金不足などでいずれもとん挫してきた経緯を踏まえ新運河事業の推進を危ぶむ声は根強い。
反米左派の政権を率いるオルテガ大統領は新運河を、中米で最貧国の1つであるニカラグアにとっては経済を飛躍させる事業と位置付けている。同国は深刻な債務を抱え、失業率も高い。
ロイター通信によると、野党の議員はHKNDへの事業認可の是非を問う投票後、ニカラグア国家を斉唱し、「オルテガ(大統領)は裏切り者」と書かれた垂れ幕を掲げる抗議を行った。
また、運河事業に反対する地域社会の連合体は声明を発表し、「国は売り物ではない。国は国民に属するものであり、大統領やその一族の私有財産ではない」と弾劾(だんがい)した。