タイで横行する犬の密輸、年20万匹が食用としてベトナムへ

年間20万匹が密輸されるという

2013.06.03 Mon posted at 16:06 JST

(CNN) タイで捕らえた犬を食用としてベトナムなどへ密輸する業者に対し、動物愛護団体が抗議の声を上げている。生きたままの犬がトラックに詰め込まれ、残酷な方法で殺されている現状を、活動家らは「まさにこの世の地獄」と非難する。

活動家らによると、タイ北東部からメコン川を渡って密輸される犬は、年間20万匹にも及ぶ。

トラック1台に1000匹も詰め込まれることは珍しくない。多くの犬が運搬中に脱水状態や窒息で生死の境をさまよい、ストレスのあまり互いに噛み付き合いを始める。

「ストレスや恐怖で出るホルモンが肉の味を上げる」という言い伝えの下、犬はベトナムに着いてからも網の中に閉じ込められる。最後には殴り殺されるか、他の犬の目の前でのどを切られる。生きたまま皮をはがれるケースもあるという。

ベトナムの動物愛護団体「アニマル・アジア財団」を率いるチュアン・ベンディクセン氏は「犬は非常に知能が高い。他の犬が目の前で殺されれば、次に殺される犬も状況を理解する」と話す。

密輸業者はタイの街で犬を捕らえて売りさばく。同国の野良犬救済団体「ソイドッグ財団」のジョン・ダリー氏によると、その98%は飼い犬で、首輪を付けたり訓練を受けたりしている犬も目立つ。

狭いかごの中に閉じ込められた犬

「ゴールデンレトリバーや長毛のテリアなど、あらゆる種類がいる。業者に直接持ち込まれるケースもあるが、路上や寺院、さらには民家の庭からさらわれることもある。飼い犬は人懐こく、捕まえやすいから狙われる」と説明する。

食用の犬の需要は近年特に高まっている。「体を温める」作用があるとされるため、冬場はなおさらだ。

タイ国内では1匹10ドル(約1000円)、ベトナムのレストラン向けには約60ドルで売れる。ベトナムの消費量は年間100万匹を超えるとみられ、密輸業者は大繁盛だ。血統の良い犬は中国でも高い値がつく。

タイ当局が取り締まりに乗り出し、動物の不法取引を禁じた法律などで業者を裁いているが、業者側は「法的根拠があいまいだ」と抵抗する。同国には動物愛護法がないため、ソイドッグ財団などが法案成立を目指して動き始めた。

だが現状では、密輸業者の刑は禁錮数カ月にとどまり、救出された犬も結局路上に戻って再び捕らえらるという繰り返しだ。

ダリー氏は「犬を食べることがいいか悪いかという問題ではない。犯罪組織による大規模な不法取引が問題なのだ。犬は残酷な方法で運ばれ、殺され続けている」と強調した。

タイで横行、犬の密輸 年間20万匹が犠牲に

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