香港不動産市場を悩ます「呪われた家」 価格を決めるのは誰?

2013.05.26 Sun posted at 14:01 JST

香港(CNN) 香港は不動産価格が世界でも最高水準にあるが、変死が発生したマンションの売値は、相場と比べて10~30%安くなるのは常識だ。死亡原因が自殺か他殺かなどによって影響の度合いは異なるが、現場のマンションは広東語で「凶宅」と呼ばれ、「呪われた家」として扱われる。

一方で、あまり知られていないのは、凶宅の住所を収集している秘密のデータベースが、香港のマンション価格を実質的に決定しているという事実だ。そして、問題なのは、管理も不十分で不完全な凶宅のデータベースが広く流布しているということだ。

不動産会社の営業幹部によれば、このようなデータベースは、建物のなかの何号室が凶宅なのかは特定しないため、高層マンションでは通常1棟全体が影響を受ける。一度データベースに登録されると抹消できないという問題点もあるという。

そして、住宅の過去の問題についての告知を義務付けた2004年の判決のために、5000社以上とされる香港の不動産業者には凶宅情報の収集が求められている。

この裁判は、マンション購入予定者が凶宅であることを知って01年に購入を取り止めたために提起された。判決では、不動産価格に影響を与えそうな事実については、不動産会社が通常知っておくべき情報も含め、購入者に告知する義務があるとされた。

さらに判決では、自殺か殺人が発生したマンションの価値は、25~30%下落すると判断された。

敗訴した大手不動産業者は、対象となったマンションについての必要な情報を得ていなかったとして、4万ドル近くの支払いを命じられている。

だが、ここで言及されているような情報は現在、情報の収集方法について管理も監督もされていない無責任なデータベースによって提供されている。

CNNは、凶宅情報に関して最も広く利用されているウェブサイト「hk-compass.com」への取材を何度も試みたが失敗に終わった。このサイトは、管理者の名前を表示しておらず、サイト運営者の電話番号も不明だ。

このサイトの価格表によると、凶宅情報は年間約42ドルで不動産業者に提供されている。

これらのサイトは運営者も分からないため当局に問題を通報することしかできない。不動産所有者団体の代表は、住宅所有者に多額の損害をもたらしているにもかかわらず当局は動こうとはしないと不満をあらわにする。

この代表が唯一頼りに出来そうだと語っていた香港立法会で不動産業界を代表する議員にも、香港運輸住宅局にも、CNNは取材することが出来なかった。

不名誉なことなので「陳」という苗字しか明かしたくないという凶宅の所有者は、政府が凶宅情報サイトを監督し、詳細な情報を提供させるというのが簡単な解決策だと主張する。

「スクエアフット」という凶宅データベースはCNNの取材に対し、12年10月時点では3438件が登録されていると答えた。凶宅物件の番地までしか示されていないケースもあり、やはりマンション1棟全体の価格に影響を与えかねない状態だ。

凶宅リストの影響を受けている不動産所有者の正確な数の推計さえ不可能であり、東アジアで不動産価格の変動が最も激しい市場の一つである香港では巨額の経済的影響があるにもかかわらず、ほとんどの人はこの問題については語ろうともしない。

香港理工大学建築不動産学部のエディー・フーイ教授は、「政府は、直ぐには結果が出せないと思われることは、取り掛からないようにしている」と嘆いた。

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