ニューヨーク(CNN) 米国人への憎悪を口にする容疑者に、自分は中国人だと強調して助かった――。米ボストン・マラソン爆破事件の容疑者兄弟が逃走中に奪った車を運転していた実業家の男性、ダニーさん(仮名)が、インタビューで車内での会話などを振り返った。
CNNは男性のプライバシーと安全を考慮して、本名を非公開としている。
兄のタメルラン・ツァルナエフ容疑者と弟のジョハル容疑者は4月18日、ボストン・マラソンのゴール付近で爆破事件を起こし、3日後にマサチューセッツ工科大学構内で警官を射殺した後、ダニーさんの運転するベンツのSUV(スポーツ用多目的車)に侵入したとみられる。
兄のタメルラン容疑者は助手席に乗り込んだ直後、ダニーさんに自分たちが爆破事件の犯人だと告げた。「まるで映画のようだろう」とも話していた。弟のジョハル容疑者は当初、別の車でついてきたが、やがてその車を乗り捨ててダニーさんの車に移った。
タメルラン容疑者は口数が多く、ダニーさんに指示を出したり、米国人への嫌悪感を詳しく語ったりしていた。ダニーさんの出身や家族のことを繰り返し質問し、「協力すれば殺しはしない」と話した。弟はおとなしく、兄が次々と出す命令に従っていた。弟がただひとつ、ダニーさんに尋ねたのは、ベンツの値段だけだったという。
ダニーさんは努めて中国人であると強調し、携帯電話や家族のことなど、身近な話題を選んで会話した。「中国人と強調したから命が助かったと思う」と振り返る。
兄弟の会話から「マンハッタン」という言葉が聞き取れ、2人がニューヨークを目指していると察知したという。自分は途中で殺害されて橋の下に捨てられると思ったとダニーさんは語った。
乗っ取りから約90分後、給油のために立ち寄ったガソリンスタンドで、ダニーさんは車から逃げ出した。その時、タメルラン容疑者につかまれた感触があり、ののしりの言葉をなげられた気がしたが、ひたすら走ったという。
ダニーさんはガソリンが切れたおかげで助かったと話している。
タメルラン容疑者はその後、警察との銃撃戦で死亡した。ジョハル容疑者は近くの民家の庭に隠れているところを発見され、拘束された。調べに対し、ニューヨークのタイムズスクエアで残り6個の爆弾を使う計画だったと供述している。
ボストン爆破容疑者との90分 車奪われた男性が語る