成功の証しの大型犬が香港でも人気 「密輸」などの問題も

チベタン・マスティフの毛並みを整えるブリーダー

2013.04.29 Mon posted at 18:00 JST

(CNN) 中国本土で富裕層のステータスシンボルとしてもてはやされている超大型犬、チベタン・マスティフの人気が香港にも飛び火している。しかし、蒸し暑く、人口密度が高い香港で飼うことの難しさに加えて、需要増大で本土からの密輸が増えれば、狂犬病などの病気が入り込むといった新たな危険を招きかねないなど、専門家からは懸念の声も上がっている。

香港の5階建てのビル屋上で飼育されている「タイガー」は体重80キロ。見知らぬ人が近付くと激しく吠えかかるが、飼い主が鎖を自分の腕に何重にも巻きつけてケージから連れ出すと、穏やかで愛らしいペットに変身する。

中国本土では75万米ドル(約7400万円)の高値がついたという逸話もあるチベタン・マスティフ。もともとはチベットでオオカミやユキヒョウといった外敵から群れを守る犬として飼育されてきたため、敵とみなした相手に対して獰猛(どうもう)になる性質がある。

平均的なアパートの広さが45平方メートルという香港でこの犬を飼うことは、危険との隣り合わせを意味する。

タイガーもかつては室内で飼っていたが、飼い主によれば、「ある日開け放っていた玄関から飛び出して近所の男性を襲った。この犬種はいったん噛みついたら放さない。男性は20針ぬった」という。

幸い、この男性は大目に見てくれたものの、飼い主は2000香港ドル(約2万5000円)の罰金を払う羽目になった。

売り物として「陳列」されているチベタン・マスティフ。富裕層のステータスシンボルという

獣医のシンシア・スマイリー氏は、チベタン・マスティフは香港の蒸し暑い気候に合わないだけでなく、犬にも人間にも高い社交性が求められる人口密集地には性質的に合わないと指摘する。

スマイリー氏がこれまでに扱った2頭のうち1頭は、男性を襲って数週間入院する大けがを負わせ、安楽死させられたという。

さらに香港での需要増大は、中国本土からの密輸にも結びつく。狂犬病が存在しない香港は、ペットの輸入を厳しく規制しており、中国本土から犬や猫を持ち込む場合は少なくとも4カ月間の検疫が定められている。

それにもかかわらず、深セン近郊ではチベタン・マスティフを2週間以内に香港に届けられるというペットショップが簡単に見つかる。

あるペットショップの経営者は「配送業者は通関当局と『特別な関係』にあるので何も問題はない」と胸を張る。1頭の値段は1万7000人民元(約27万円)前後。香港からは十数頭以上のまとまった注文が入ることもあるといい、香港で転売して利益を上げる人もいるようだと業者は解説する。

こうした状況について香港の動物愛護団体は、「香港には狂犬病が存在せず、検疫制度と予防接種の制度が確立されているのに、密輸によってそうした制度が危険にさらされかねない」と危惧している。

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