東京(CNN) 「日経平均株価と連動して、私たちのスカートのすそも上がります」――安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」を応援するアイドル・ユニットが、東京の秋葉原に誕生した。
キラキラ光る大きな蝶ネクタイにデニムのミニスカート姿の4人が、道行く人に「街角景気です。コンサートに来てください」と呼び掛けながらチラシを配る。
正式なユニット名は「街角景気☆JAPAN↑」。メンバーの1人、桜雪(20)は、「景気が良ければスカートが短くなる。私たちのスカート丈は日経平均が9000円より下ならロング、1万~1万1000円ならミディアム、1万1000~1万3000円ならミニになります」と説明する。
デビュー曲「アベノ☆MIX」は今月上旬に発売されたばかりだが、コンサート会場ではオタクの若者やスーツ姿のサラリーマンなどが振り付けをまねたり、歌に合わせてケミカルライトを振ったりして盛り上がりを示す。日経平均が1万3000円を超えているためか、この日の衣装はショートパンツだ。
メンバーの雪に「アベノミクスとは」と質問を投げ掛けた。「円安で物価は上がるでしょう。でも一方で輸出がしやすくなって企業の収益が上がり、消費も上向くと予想しています」と、よどみない答えが返ってきた。
まさにアベノミクスの理論だが、このシナリオを成立させるには頭の切り替えが必要だ。麻生太郎財相が最近CNNとのインタビューで述べた通り、過去20年間で国民に根付いたデフレ思考、「明日はもっと安くなるからきょう買わない」という発想からの脱却が、大きな課題となる。
2007年にアマチュア向けの株式投資スクールを設立した浦山徹氏の下には、ここ数カ月の株価上昇を受けて入会希望者が殺到しているという。だが浦山氏は、「経済全体にとって良いことなのかどうかは分からない。80年代ほどではないにしろ、バブル発生につながる恐れもある」と、アベノミクスに懐疑的な見方を示す。
街角景気のコンサート会場では、歌い終わったメンバーが客席に「シングルを買ってもらえましたか」と問い掛ける。ファンから元気な返事は返ってこなかった。
派手な外見が人気を呼ぶわりに、実体がともなわない――。その光景はまさに、懐疑派が恐れるアベノミクスの姿そのものではないだろうか。
「株価が上がればスカート丈も」 街角景気☆JAPAN↑