ニューヨーク(CNNMoney) 米国で州ごとに大きく異なるたばこ税の差額を利用して、他州から持ち込んだたばこで不正に利益を上げようとする密売ビジネスが横行している。
例えばトレーラー1台分のたばこをバージニア州で買ってニューヨークで販売すれば、194万4000ドル(約1億9000万円)の儲けが出る。
これはアルコール・たばこ・火器爆発物取締局(ATF)が、たばこ600箱入りのケース800個をバージニアからニューヨークに持ち込んだと想定してはじき出した数字だ。
バージニア州のたばこ税は1箱当たり30セント。これに対してニューヨーク州では4.35ドルが課税され、ニューヨーク市ではさらに1.5ドルが上乗せされる。
州をまたいだたばこの販売は法律で禁止されている。しかし米シンクタンクの調査によれば、2011年にニューヨークで売られていたたばこの60%強は、他州から密かに持ち込まれたものだった。この数字は06年の36%に比べて大幅に増えている。
ニューヨーク州に限らず、他州からのたばこの割合が20%を超す州は同シンクタンクの集計で15州に上る。外国から密輸される偽たばこを含めると、年間50億ドルを超す税収が失われている計算になるという。
ATFによると、密売の手口はコンビニエンスストアの経営者が他州で買ったたばこを車のトランクに積んで持ち込むケースから、アジアやロシアの犯罪集団がトラックで大量に持ち込むケースまで多岐にわたる。
国際テロリストが絡むケースもあり、2002年に訴追された男は、密売で得た利益をレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラに流した罪に問われた。たばこを積んだトラックが乗っ取られる事件も起きているという。
さらに海外からの偽たばこ流入も増えている。大半は中国産で、米たばこ大手アルトリアの広報によれば、こうしたたばこからはネズミやウサギのふんなどが見つかっているという。偽たばこは普通のたばこに比べて消費者にとっての健康リスクが大きいと同社は強調する。
さらにメキシコなどからは、正規のたばこも米国に密輸されているという。
米国では各州がたばこ税の値上げに踏み切っているほか、オバマ大統領は1箱あたり94セントのたばこ税増税を提案。アルトリアなどの各社から資金提供を受けているシンクタンクの担当者は、「税金が上がり続ければ米国への密輸量は増えるばかりだ」と主張する。
これに対して嫌煙団体などは、たばこの値段が上がれば禁煙する人が増えると反論。喫煙者の減少による公衆衛生上のメリットは、密売や密輸によるデメリットをはるかにしのぐと話している。