出稼ぎ労働者60万人に強制労働被害か、人身売買や性的搾取も 中東全域

2013.04.13 Sat posted at 17:35 JST

(CNN) 国際労働機関(ILO)は13日までに、外国の出稼ぎ労働者が押し寄せる中東全域で最大60万人が強制労働の被害者となっている可能性があるとする報告書を発表した。人身売買や性的搾取の被害も多い。

この数字が本当なら同地域の住民1000人当たり3.4人が強制労働にあえぐ計算となる。これら被害者は有りもしない仕事の申し出でだまされ、約束とは違う過酷な労働環境に突き落とされていると説明した。

報告書は中東での人身売買を主題にしたもので、ヨルダン、レバノン、クウェートやアラブ首長国連邦(UAE)で過去2年に実施した650件以上の面談などに基づいている。面談の対象者の半数以上が出稼ぎ労働者。残りは雇用主、政府当局者、雇用主や労働者の団体代表。ILOはただ、強制労働などの実態把握のために必要な基本データは乏しいと釘も刺している。

報告書によると、業者や個人の雇用主による人身売買などの被害を最も受けやすいのは特殊技術など持たない労働者。犠牲者は経済力が乏しく、借金を背負い、低学歴が目立つ。

特に個人宅で働く労働者の被害が目立つ。休憩時間がなくて労働現場に閉じ込められ、監視を受け、台所や廊下での睡眠も強いられる。身元証を没収され、賃金も支払われず脱出も出来ない。極端な例では体罰や性的暴行もある。フィリピン人の女性労働者はバルコニーから逃げようとして捕まった体験を暴露。クウェートでは比女性が雇用主にレイプされた被害を明かした。

同報告書は、性産業での労働を強いられる被害者は暴力や拘束、送還の切実なリスクにさらされているとも指摘。これら被害者はアジアやアフリカ女性に多く、だまされたり脅かされたりして働いていると述べた。出稼ぎ労働者が性産業を牛耳り、同じ国の労働者を餌食にする例もある。

報告書は男性の出稼ぎ労働者の被害にも触れ、特に建設や製造、海運、農業の業界での人身売買が顕著と主張。生活や労働環境、与えられる仕事などでだまされる事例が多い。屋内の仕事の提供が砂漠での家畜の群れの世話だった男性もいた。

一方で、全ての出稼ぎ労働者が悪夢のような仕事を強いられているわけではない。母国での貧困から抜け出すため外国に渡り、その目的を果たした労働者もいる。

ILOは、出稼ぎ労働者は中東の多数の国の経済にとって欠かせない存在でもあると指摘。一部の国では出稼ぎ労働者の数が地元の労働者数をかなりの程度上回っている例もある。カタールでは労働者の94%が他国の出身者で、サウジアラビアではこの比率は半分超となっている。

出稼ぎ労働者の待遇改善では中東地域で改善も一部見られる。人身売買根絶の法案成立などで強制労働や人身売買の廃止に近年取り組む政府もある。ILOはただ、この種の法律の施行や人身売買の関与者の処罰が徹底されていないと説明。雇用主の出稼ぎ労働者に対する強い管理権限などでの抜本的な改革を提案。業者ではなく、政府の労働省が出稼ぎ労働者の募集を仕切り、苦情などに対処する方式を促した。

また、全ての労働者の保護や雇用契約の変更、監査強化、賃金差別の廃止などを実現させるための法的措置の拡大も提唱した。

最大60万人の出稼ぎ労働者に強制労働の被害か、中東

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