激しさ増す北朝鮮の挑発 正恩氏は新たな脅威か、内部で混乱か

金正恩(キムジョンウン)第1書記=KCNAから

2013.04.07 Sun posted at 18:22 JST

(CNN) 若く、その能力についても分からない金正恩(キムジョンウン)第1書記が率いる北朝鮮が、韓国や米国に対する激しい威嚇をかつてない水準にまで高めている。様々な強烈な威嚇の言葉には、米国に対する核先制攻撃の警告まで含まれている。

北朝鮮の外交には、瀬戸際政策や威嚇、怒りは常につき物だったが、なぜ今回は、それらが前例のない水準にまで達しているのだろうか。これまでとは異なり、核戦力を保持する無鉄砲な若きリーダーは、無視できない新たな脅威となっているのだろうか。

いくつかの点で、北朝鮮によるこういった動きは以前にも見られたものだ。北朝鮮は長年、潜在的脅威からの自衛、国内における引き締めや団結の強化、および国際社会に対する不満の表明などのために威嚇や怒りを利用してきた。

しかし、今年に入ってからは、国際社会からの圧力が強まっているように見える。

衛星発射および核実験を受けた国連安保理決儀による予想以上に厳しい金融制裁をはじめ、北朝鮮からの攻撃を阻止する政治的決意を示すような米韓合同軍事演習、国連人権理事会による北朝鮮の人権侵害に関する調査委員会設置などだ。

そしてこれらが、北朝鮮からの並外れた反発を招いているのだが、この反発は脆弱(ぜいじゃく)さの表れでもある。

正恩氏は従来の「やり方」を踏まえていない?

また、北朝鮮は昔から、新しい韓国大統領の北朝鮮への姿勢を試すために威嚇や挑発を用いており、それへの反応を見て対韓政策を決めている。今のところ韓国の新政権は、威嚇には威嚇で対応し、北からの核の脅威の可能性に対しても屈しないとの態度である。

最近では韓国メディアが、故金日成(キムイルソン)主席と故金正日(キムジョンイル)総書記の銅像を破壊するという軍事作戦計画について報じてもいる。

だが、一昨年12月以降の金正恩体制の下での対外的威嚇は、その強烈さと頻度の両面で不安を覚えさせるものだ。

正恩氏に対しては、最初は強く出て徐々に威嚇のトーンを下げていくという南北朝鮮間の従来のやり方を良く理解しているのどうかといった点で疑念が生じている。また、父の正日氏よりも大きなリスクを取るのではないか、あるいは、本当に衝突につながる計算違いをする可能性が高いのではないかといった点も懸念されている。

政権内部の混乱、あるいは体制固めが必要なために、正恩氏が、よりぎりぎりの瀬戸際政策の推進を迫られているのかについても分かってはいない。

韓国との関係は?

相手を驚かせたり曖昧(あいまい)な態度を取ったりして、対決が全面的にエスカレートすることは避けてきた北朝鮮だが、もし威嚇が直接的衝突にまで発展するのであれば、新指導部内部で何か重大な問題が生じているということだ。

威嚇に続く「微笑み外交」で緊張を和らげ外交的な実利を得てきた北朝鮮には、米国と同様にウンザリしている韓国だが、春の軍事演習が終了に向かう中で、北朝鮮に緊張緩和のチャンスを与えようとしている。

朴槿恵(パククネ)大統領の韓国新政権は、人道支援と北朝鮮の核開発問題を分離して扱っており、「信頼プロセス」の醸成を通じ南北関係を改善するとして粘り強く和解を呼びかけている。

北朝鮮にとり韓国は、国内の体制固めのためには敵であるべきだが、経済援助の提供国でもあるという矛盾した存在だ。そして、威嚇と微笑外交を交互に繰り出すという古びた戦略で北朝鮮が得られる利益が減り続けているため、北朝鮮への対処は、今回はより困難なのかもしれない。

本記事は、米シンクタンク「外交問題評議会」で朝鮮問題担当の上席研究員などを務めるスコット・スナイダー氏によるものです。

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