新しい最高指導者、習近平氏 待ち受ける難問の数々は

新しい国家主席、習近平氏の前には問題が山積

2013.03.31 Sun posted at 17:50 JST

(CNN) 3月中旬に行われた中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で新国家主席に選出された習近平(シーチンピン)氏(59)は、共産党・国家・軍のトップとして名実ともに中国の最高指導者となった。

習氏の国家主席就任で、10年にわたり中国を統治した70歳の胡錦濤(フーチンタオ)前主席から、昨年11月の共産党総書記への就任により最高指導者となることが事実上決まっていた習氏への権力移譲は完了した。

専門家からは、習主席について、江沢民(チアンツォーミン)元主席や胡氏とは異なり、実力者だった故トウ小平氏に抜擢されたわけではないために力の弱いリーダーであり、江・胡両氏の影響力が残る中では権力基盤固めには2、3年はかかるだろうとの声が出ている。

しかし、この見方は、胡氏から党トップの総書記と軍トップの党中央軍事委員会主席の座を譲り受けた昨年11月の党大会以降、変化の予感とともに覆されつつあるようだ。

習氏は全人代の閉幕式の演説で、一般大衆の声に耳を傾けつつ中華民族の偉大な復興に全力を尽くすことを誓った。

習氏が総書記就任直後の初の地方視察の地として、毛沢東思想や革命の聖地ではなく、広東省深センを訪問したのは象徴的だった。

経済の鈍化や貧富の格差といった課題も

ここは、経済改革が最初に試され、寂れた村から活気溢れる経済センターへと30年で発展した場所だ。

深センを経済特区に指定したのは、習主席の父で、広東省長も務め経済改革を先導した故習仲勲・元副首相である。

習主席が、従来のやり方をどの程度維持するのかは就任間もない時点ではまだ不明だが、既にいくつかの試練にも直面している。

今年1月には、リベラル色の強い「南方週末」紙の記者たちが、法治主義の強化を訴える記事が、地元の広東省共産党委員会宣伝部長により改ざんされたとして抗議活動を展開。この動きは国内で幅広い支持を集めるなど、中国の新指導部に対する圧力となった。

暫定的な妥協策でその後収拾された南方週末の一件を、香港浸会大学のジャンピエール・カベスタン教授は「勝者はおらず、引き分けのようなものだ」と指摘。一部で政治改革の動きが見えるものの、決定的なものではないと付け加えた。

カベスタン教授はまた、習主席になってからは新しいスタイルは垣間見えるが、政策・組織面や、外交を含む政治手法には明確な変更点はないため、本質的な変化については疑問符が付くとしている。

しかし、人民大会堂の中でインタビューした全人代代表(議員)からは、より楽観的な声も聞かれた。

中国海軍が保有する潜水艦。周辺海域における領有権問題で各国との緊張が高まっている

製薬会社の経営にも携わるサイシージー氏は、地方幹部からスタートした習氏について、社会や人々の気持ち、そしてやるべきことをよく理解していると指摘。独占企業でもある国有企業に対して不利な立場にある民間企業への後押しを期待しているという。

国営出版社の編集者フアンヨウイ氏は、教育も受けていながら青年期に長年農村で生活した経験も持つ習氏が率いる新政権について、実務家の集まりだが直面する問題も非常に大きいとの見方を示す。

中国は、経済成長の鈍化をはじめ、失業者の増加や貧富の格差拡大、腐敗の蔓延(まんえん)、環境・公害問題、大衆の不満や社会の不安定化など数々の難問に直面している。

これらに加え、国力伸張とナショナリズムの高揚により、日本など近隣諸国とのあつれきも高まっており、習氏はこれらの問題の解決先送りが許されないと専門家は声をそろえる。

中国問題の専門家であるロバートローレンス・クーン氏によれば、ソーシャルメディアや携帯端末の普及で増幅された大衆の大きな怒りと、2012年に発生した政治スキャンダルが、本人の持つ素質やビジョンと合わさって、習主席の政治力にとって大きな追い風となっている。

中国が抱える根深い問題を解決するためには、信任が厚く、政治資本も豊富な習氏が、その強力な政治基盤や実行力を生かすことが必要だとクーン氏は指摘する。

習主席が、これらの難題をどのように処理するのかが、13億人の中国人、そして、全世界の人々運命をも大きく左右することになりそうだ。

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