「世界最大の商店街」は今やゴーストタウン、不動産バブルのツケ 中国

ヤシの木が植えられ、遊具が設けられるなど、ぜいを凝らしたモールだが、いまではゴーストタウンと化している

2013.03.10 Sun posted at 17:40 JST

中国・東莞(CNN) 世界最大級の巨大ショッピングモールを造ったものの、客はやって来なかった。

中国南部・広東省東莞市で2005年にオープンした「ニュー・サウスチャイナ・モール」は、約46万平方メートルのショッピングエリアに2350もの店舗が入居可能で、店舗賃貸面積では、米国最大級の「モール・オブ・アメリカ」の2倍を超える世界最大規模のショッピングモールだ。

建物の外を彩るのは、凱旋門のレプリカやスフィンクス像、噴水、ゴンドラが浮かぶ長い運河、それに、何百本ものヤシの木だ。

このモールの唯一の問題点は、ほとんど荒地と化してしまっているということだ。不動産情報を扱っている独エンポリスの昨年の報告書によれば、大半が空き店舗で買物客もほとんどおらず、機能停止状態だとされている。

シャッターの閉められた店舗の間を歩いてみると、通路はほこりっぽく、エスカレーターには汚れたシートが被せられている。

ジェットコースターが走り回る室内遊園地では、従業員が居眠りやおしゃべりで暇つぶしをしている。

モールのデベロッパーは、05年のオープン時には1日平均10万人の買物客を見込んでいた。しかし、8年たった今では、僅かな客が、入口近くのファストフード店やモールの外のIMAXシアターを訪れるくらいである。

室内遊園地もあるが、スタッフの大半は手持ちぶさたの様子だった

工業都市の東莞市は人口は1000万人近いが、その大半を占めるのは、ぎりぎりの生活をしている市外から流入してきた労働者だ。こうした立地も問題ではある。

だが、荒廃したモールは、中国の急激な都市化や、無謀で投機的な不動産開発の象徴だ。

香港大学の張維良助教授は、このモールも、資金調達が容易な中で、合理的な事業計画もなしに楽観的・投機的に推し進められた結果「ゴーストタウン化」している多くの住宅用・商業用不動産開発事業の1つだと指摘する。

2007年以降の世界的な金融危機に対応するための景気刺激策として貸出拡大が図られたことが、投機的不動産開発ももたらしてしまったのだ。

しかし、それではなぜ中国経済は今でも、7~8%という堅調な経済成長を維持できているのか。

開発途上国を専門とするコンサルティング会社経営のジョナサン・アンダーソン氏は、2月の調査報告書の中で、景気刺激策がもたらした貸出ブームの中で、無謀な計画の下、多くの「死の街」が生み出されたのは事実だが、中国経済全体への影響はほとんどないと指摘している。

年内に占有率を80%に高める目標を掲げているが・・・

製造業部門やサービス部門の利益は減少してはおらず、市場で売買可能な不動産の価格は充分に回復可能であり、中国の銀行システムは、「意外なほど順調に不良債権に対処できている」という。

たが、中国全体の経済成長は好調でも、より安い労働力を求める工場の中国内外への転出などによって東莞市が多くの問題を抱えているように、一部の地域は困難な状況に置かれている。

ニュー・サウスチャイナ・モールでは、モールの投資部門責任者が現在は20%だと主張する店舗入居率を、大規模な宣伝などにより今年中に80%へと引き上げることを目指している。

ただし、モールの活性化策の実施は初めてではない。モールは、地元出身の富豪が建設したのだが、後に北京大学が設立した先端企業グループ「方正集団」に売却されている。

そして、2007年の再スタート時に名称を、「サウスチャイナ・モール」から「ニュー・サウスチャイナ・モール――活気溢れる街」へと変更し、活性化計画も練られた。しかしその後も、買い物客や入居店舗は増えてはいない。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。