(CNN) 何十年もの間、ハリウッド映画は米国のブランド力の大きな部分を占めている。米国映画は、世界中で観客動員記録の更新を続け、この1年の間には、米国外での興行収入が5億ドル(約460億円)を超えた映画が何本もあった。また、先日のアカデミー賞授賞式は、主催者によると世界の225を超える国・地域で視聴された。
ハリウッド映画などの米国の大衆文化は、一貫して米国のソフトパワーの切り札であり、そのイメージ向上への貢献も大きいという。
昔からインテリ層の間では低く見られているとされる欧州でも、米国文化は一般の人々の間では大人気だ。2012年の米調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査では、カンヌ映画祭を開催するなど独自の映画文化を持つフランスの72%を含め、欧州連合(EU)内の8カ国全てで過半数を大きく超える人々が、米国の映画・音楽・テレビ番組を好きだと答えている。
オバマ大統領になってから、欧州での米国大衆文化人気はさらに高まっているが、反米感情が広まっていたブッシュ前大統領の時代にも、欧州人の大半は、米国大衆文化には好感を持っていた。
欧州以外でも、日本やブラジル、メキシコでは約7割の人が好きだと答えるなど、米国の映画・音楽・テレビ番組は多く国で愛されている。
ドイツでは、米国大衆文化が好きなのは、50歳以上の人では47%だが30歳未満では94%にも上る。ロシアやフランス、英国などでも同様の世代間のギャップが見られるが、米国大衆文化はほとんどの国で、特に若者達を引き付けている。
中国で米国大衆文化を好きなのは、大卒では74%だが、高卒以下では半数未満であるように、多くの国で学歴によっても好感度に差が出ている。
ただし、特にイスラム圏諸国などでは、米国大衆文化への好感度は低い。ピュー・リサーチの調査対象20カ国の内、パキスタンとトルコ、エジプト、ヨルダンの4カ国で、過半数の人が、米国の映画・音楽・テレビ番組は好きではないと答えている。
米国文化への見方と米国全般へのイメージは連動しており、これらの国では、米国の政策などへの反発・不信がいまだに強い反米感情につながっている。
しかし、イスラム諸国においても意見に違いはある。
各宗派が入り組んだレバノンでは、イスラム教スンニ派の約6割が米国大衆文化を好きと答えているほか、同シーア派の約半数も米国文化に好感を抱いている。特に後者は、シーア派のわずか7%しか米国に対して肯定的な見方をしていないことを考えると驚くべき数字だ。また、同国のキリスト教徒では、約8割の人が米国大衆文化を好きだと答えている。
もちろん、米国やその娯楽文化に好感を持つ国においても、米国文化の侵入を不安視する声は少なくない。
調査対象20カ国の中で、自国内への米国の習慣・思想の浸透を過半数の人が肯定的に捉えているのは日本(58%)だけだった。英国をはじめ、フランスやスペイン、ドイツ、チェコ、ギリシャでは、同じ見方をする人は3分の1未満で、エジプトやヨルダン、トルコ、パキスタンでは、その割合はさらに低くなっている。
ただし、米国文化への反感と好感は表裏一体であることが多いという現実もあり、米国映画の海外での人気と興行収入はさらに拡大している。
結局、米国文化だけが世界中に広まることに対する不安はあっても、多くの人はアカデミー賞授賞式にひきつけられるのである。
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本記事は、米調査機関ピュー・リサーチ・センターのアソシエートディレクターであるリチャード・ワイク氏よるものです。記事における意見や見解は全てワイク氏個人のものです。