サッカー名選手育成の鍵は脳トレにあり?

英ブルネル大学の研究チームによれば、サッカーの名選手は運動能力だけでなく相手の動きを予測する知能も高いという

2013.02.27 Wed posted at 15:27 JST

(CNN) 現代のプロサッカーは生理学や医学の専門家、トレーナーなどがチームを組んで選手の肉体を磨き上げる。一方で見過ごされがちなのが、最も重要な臓器である脳のトレーニングだ。

英ブルネル大学の研究チームによれば、バルセロナのリオネル・メッシ、レアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウドといった名選手は、運動能力だけでなく、相手の動きを予測する知能も高いという。

同研究チームは新人からプロ級までさまざまなレベルの選手39人を対象に、磁気共鳴画像装置(MRI)を使って反応を調べながら、自分に向かってドリブルしてくる選手の映像を見せ、相手と渡り合うためにどの方向に動くかを判断させる実験を行った。

その結果、経験を積んだ選手ほど本能的に動こうとする衝動を抑える能力が高く、敵のフェイントやトリックにだまされにくいことが判明。優れた選手は相手の動きやトリックを敏感に知覚していることを確認した。この結果は、過去にバドミントンの選手で行った実験の結果とも一致するという。研究結果はスポーツ心理学の専門誌に発表された。

ブルネル大学の研究者ダン・ビショップ氏は、この研究が英国で新しい世代のスター選手を育てる一助になるとの考えだ。「こうした高いレベルの神経活動は、質の高いトレーニングを通じて強化できる。次のステップは、どんな脳トレーニングをすれば相手の動きを読めるようになるか調べることだ」と同氏は話す。

経験を積んだ選手ほど本能的に動こうとする衝動を抑える能力が高く、敵のフェイントやトリックにだまされにくいことが判明した

実際に、脳の力を高めて有力選手を育てようとする指導者も増えている。エリート選手の育成を専門とするサッカー・アイQ社の技術ディレクター、ケビン・マグレスキン氏はサッカー専門誌の取材に対し、「指導者は、サッカーが認知力のスポーツだということを忘れがちだ」「肉体と同時に選手の脳も鍛えなければならない」と指摘する。

サッカー選手の脳トレのパイオニアで、ベルギーのサッカーチーム、スタンダール・リエージュの学術ディレクターだったマイケル・ブルイニンクス氏は、「脳中心の学習」を重視して、若手選手の認知力を強化させるプログラムを考案。神経科学とサッカー技術に同程度の重点を置く。

両氏が脳トレの一環として取り入れている「オーバーロード(「過負荷」の意味)」は、運動しながら違う言語で話すことを要求したり、サッカーに関連した練習中にテニスボールを投げさせたりする内容。「脳のエングラム(記憶の痕跡)を発達させなければならない」とブルイニンクス氏は言う。

同氏の理論は、レアル・マドリードを率いるジョゼ・モウリーニョ監督も採用しているという。

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