「目標設定」だけでは業務は改善せず 適切な目標かどうかの検証を

「ゴール」を決めるには目標設定だけでは不十分

2013.02.18 Mon posted at 18:25 JST

(CNN) 「乱暴な目標設定」と題された学術論文が2009年に発表された時、目標の押し付けを嫌がる一般社員から歓迎する声が相次ぐ一方で、経営幹部や管理職からは不満の声が聞かれた。

この論文は、職場における目標設定が必ずしも生産性や収益向上のための最良の手段ではないことを示唆するものだった。しかし、共著者でアリゾナ大学経営学部教授のリサ・オルドニェス氏のもとには、経営戦略を台無しにしてくれたことに対する「感謝のメール」が送られてくることとなった。

しかし、オルドニェス教授は、この論文が目標設定そのものを否定しているわけではなく、目標が真に有益なものなのかを徹底的に吟味すべきだと主張しているのだと説明する。

同教授がこの論文を書くきっかけとなったのは、経営や管理職向けの指南書などでは目標設定が、困難な状況に置かれた企業にとり、万能薬であるかのように記述されていることが多いと感じたことだった。

論文では、不適切な目標設定が、社員のやる気を引き出すことに失敗しただけではなく、反倫理的行為や企業の経営不振にまでつながったケースにも焦点を当てている。

例えば、2001年に破綻(はたん)した米国の巨大企業エンロンだ。

不適切な目標設定は従業員のやる気をそぐことも

エンロン社では1990年代末、販売担当者に対する歩合制の報酬が売り上げに応じて支払われると同時に、販売する商品の価格の決定権は担当者にあった。利益よりも売り上げの増加を優先することになったという点で危険かつ間違った目標設定であり、同社破綻の一因ともなったと論文は示唆している。

アリゾナ大学のオルドニェス教授は、設定された目標が、他の重視すべきものなどと相反する時や、目標設定が柔軟性を欠くものとなった時に問題が発生しやすいと指摘している。

この論文が最初に発表されてから3年以上が経過したが、単に目標を設定すれば自然と問題は解決されるといった姿勢から、より包括的に問題解決の方法を考えるといった姿勢への変化が感じられるとオルドニェス教授は語る。

米国の人事コンサルティング会社エーオンヒューイットの人材開発リーダーであるベアトリス・グレッチカンボ氏は、有能なリーダーや経営者には賢明かつ柔軟に目標を設定することが必要だとの見方を示す。

また、ここ数年で企業や経営者は、全員に同じ目標を与えるのではなく、社員それぞれの役割などにも応じて異なる目標を設定するようになっているとグレッチカンボ氏は指摘する。

「画一的な目標設定」は過去の話だという

グレッチカンボ氏は「かつては、全社的に同じ目標を設定するようなケースも見られた。しかし、いまでは、会社の中でそれぞれの従業員がそれぞれの役割を担うといった状況で、はるかに複雑だ」と語る。

管理職や会社にとっては、社員それぞれに適した数値目標を設定し、その功績を定量的に評価するということが困難であることには変わりはない。

アリゾナ大学のオルドニェス教授は、組織が大きくなり、経営者と社員の距離が離れるほど目標設定や評価が難しくなるとの見方を示す。

簡単ではないが、社員のことや会社が置かれた環境をよく理解し、何とかして社員のやる気を引き出すことが肝要だという。

エーオンヒューイットのグレッチカンボ氏は、管理職は、これまでのやり方よりも手間はかかるが、目標の設定とそれに到達する方法を見出すことの両方に重点を置いて取り組むべきだと指摘する。目標達成までの過程で何か学べるものがあれば、やる気を引き出すのに非常に有効で社員と会社の双方にメリットとなると同氏は付け加えた。

グレッチカンボ氏は、多少の手間はかかっても真に適切な目標設定を行えば、やる気や大きな達成感につながり、そのメリットは非常に大きいと指摘する。

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