独自スタイルを築きつつある正恩氏 父親の影と決別か

北朝鮮の金正恩第1書記=KCTVから

2013.02.17 Sun posted at 17:16 JST

(CNN) 北朝鮮では16日、故金正日(キムジョンイル)総書記の誕生日を迎えたが、同国の若き指導者となってから1年以上が経過した金正恩(キムジョンウン)第1書記は、父が残した大きな影に飲み込まれることなく、独自のスタイルを築きつつあるようだ。

昨年4月のロケット発射の失敗は屈辱だったが、12月には成功させた。これについては、事実上の弾道ミサイル技術の実験だと国外から非難されているが、北朝鮮は人工衛星を軌道へ投入したものだと主張している。

それを受けて国連が制裁を強化すると、北朝鮮指導部は、米国を意識しつつ、新たな核実験実施や長距離ロケットの実験の継続を宣言。今月12日には実際に3度目の核実験を実施した。

自らの足跡を残すという正恩氏の決意は固そうだ。経験の浅さによりまごつくこともなく、父の正日氏に忠実だった軍幹部を自らの子飼いの幹部に入れ替えて迅速に国内の権力基盤を固めた。

非営利研究機関CNAの国際問題部門のディレクターであるケン・ガウス氏によれば、「先軍政治」を掲げて強大な力を持つ国防委員会を中心に権力を掌握していた正日氏に対し、正恩氏は、権力の中心を朝鮮労働党組織に戻しつつあるとの見方を示す。

2011年12月に行われた故金正日総書記の国葬。正恩氏は独自のスタイルを打ち出しつつあるようだ

スイスへの留学経験があり欧米文化にもなじんでいる正恩氏だが、一部の北朝鮮専門家は、正恩氏が、正日氏や、祖父で北朝鮮を建国した金日成(キムイルソン)国家主席ほどの絶対的な権力は保持してはいないと見ている。

韓国・延世大学の政治学教授ムン・チュンイン氏は、党・軍・国家全体を正恩氏が支配出来ているのは、叔父の張成沢(チャンソンテク)氏や、張氏の妻で叔母の金敬姫(キムギョンヒ)氏、金一族の腹心の崔竜海(チェリョンヘ)朝鮮人民軍総政治局長などの助けがあるためであり、統治というよりも君臨しているようだと指摘する。

一方で、まだ30歳前後とされる正恩氏は、妻の李雪主(リソルジュ)氏と遊園地でアトラクションに乗る姿が放映されるなど、ソフトで愛想の良いスタイルを打ち出している。正日氏の時代には考えられなかったことだ。

指導者時代に短い演説が一度放映されただけだったとされる正日氏とは異なり、正恩氏は、公の場での発言にも積極的なようで、昨年4月の平壌での演説では、国民生活の困窮にまで言及し、その解決を約束している。

アジア・太平洋問題を専門とする研究所の創立者ジャスパー・キム氏は、「グーグル世代」である正恩氏は、国際社会に対する発信が様々な国益にとって重要であることを認識していると説明する。

昨年12月のロケット発射=朝鮮中央通信から

正恩氏が国際社会と協調できる人物である可能性はあるものの、最近の北朝鮮の攻撃的な姿勢などは、そういった可能性を否定するものだ。

延世大学のムン教授は、国家の体制や安全保障に関する限り、北朝鮮では強硬派と穏健派の間に違いは無いと指摘する。

ムン教授によれば、北朝鮮指導部は、宇宙の平和利用目的のロケット発射が国家としての当然の権利であるとみなしているほか、核実験などの挑発的な言動についても、米国や国連による不当な制裁への正当な対応だと信じているという。ムン教授は、「非常に大きな認識の相違があるようだ」と語る。

一方で、援助団体によると、上下水道さえ未整備の地方では、いまだに栄養失調が蔓延(まんえん)しており、人々の生活にほとんど変化はない。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、劣悪な居住環境と虐待で悪名高い強制収用所に何十万人もの人が奴隷のように収容されていると指摘。さらに、正恩政権は発足直後に、中国への逃亡を企てるものは即座に狙撃することを国境警備隊員に命じたとしている。

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