韓国にとって北朝鮮の脅威は「日常」 核実験でも世論に変化なし?

北朝鮮が打ち上げたロケット「銀河3号」=2012年12月、朝鮮中央通信から

2013.02.10 Sun posted at 16:39 JST

(CNN) イ・ユンジュンさんは子どものころ、学校でサイレンが鳴る度にクラスメートと共に地下室に避難していた。北朝鮮の攻撃に備えた「民間防衛訓練」が実施されていたためだ。しかし、46歳の母親となった李さんの子どもたちが通う、韓国南東部の蔚山(ウルサン)市の学校では、そのような訓練はもう行われてはいない。

訓練がないという事実は、南北朝鮮の緊張関係に対する感じ方の変化を象徴している。イさんを含む多くの韓国人は、隣接する北朝鮮の重大な脅威にも慣れてしまっているのだ。

北朝鮮は先ごろ、新たな核実験とさらなる長距離ロケット発射の計画を発表し、その翌日には、韓国が国連による制裁に加われば「強力な物理的対応措置」を講じるとの姿勢を示した。

しかし、韓国人の生活に変化は見られなかった。ソウルのアサン政策研究所世論研究センターのカール・フリードホフ氏は、脅威も日常生活に一部となっているためだと説明。フリードホフ氏は「韓国は常に北朝鮮に対応している。韓国メディアはいつも北朝鮮による脅威を報じている。常に脅威を受けた状態で生活していると、ある時点でそれが日常に変わる」と語った。

同研究所の世論調査によると、国際的に非難を浴びた昨年12月の長距離ロケット発射の後でも、韓国人は、北朝鮮に関する懸念よりも国内の経済問題などの方がはるかに高い関心がある。

北朝鮮のロケット打ち上げ施設=2012年12月、朝鮮中央通信提供

フリードホフ氏は、もし北朝鮮が核実験を実施しても世論に変化は無いだろうと付け加えた。

蔚山市のイさんも、「北朝鮮が核兵器を持っていれば戦争は簡単には起きないだろう」と語る。中国やロシア、日本などの経済的混乱に対する懸念が、戦争の勃発や朝鮮半島の不安定化を防ぐ方向へ国際社会を促すだろう付け加えた。

アサン研究所が2000人を対象に実施した2012年の調査では、北朝鮮人について韓国人の33%が「同胞」、32%が「広義の同胞」と思っている。そして、「敵」だと思う人の割合は19%で、「外国人」だと思う人は10%、「関心が無い」人は6%となっていた。

南北朝鮮は、1953年に朝鮮戦争の休戦協定に署名したが、正式な平和条約は締結されておらず、北朝鮮からの威嚇は常態化している。

ソウル郊外に住む大学生のユン・ドンクンさんは、挑発は多いが現実に安全保障上の脅威となった例は非常に少ないため、北朝鮮の核による挑発に対しても韓国人は、外国人ほど心配していないと指摘する。

ただし10年には、韓国北西部の大延坪島(テヨンピョンド)への北朝鮮による砲撃で民間人を含む4人が死亡したほか、韓国軍哨戒艦が北朝鮮によると見られる魚雷攻撃で沈没して乗組員40人以上が犠牲となった。

ユンさんも、北朝鮮の脅威が皆無ではないことは認めるが、今回の核実験計画は、より大規模な経済援助などを狙った瀬戸際外交なのだろうと見ている。

1月初めには、南北統一のための対立解消の重要性に最高指導者の金正恩(キムジョンウン)第1書記が言及していた。しかし、2月に入ると国営メディアが、米韓への批判を強めるなど、最近、北朝鮮からのメッセージは揺らいでいる。今月3日には、国力強化のための「重要な結論」を正恩氏が下したとも発表された。

フォーブス・コリアの編集者ホン・スンイル氏は、核実験が実施されても既に3回目であり、韓国内外の株式市場も落ち着いていると指摘。朴槿恵(パククネ)次期大統領が、男子の徴兵期間の2年から1年半への短縮を目指していることなどからも、北朝鮮による挑発を韓国人は脅威と感じてはいないとの見方を示す。

ホン氏はまた、ほとんどの韓国人は、北朝鮮指導部が敵対的でも、北朝鮮の人々を敵だと思ってはいないようで、両者を区別しているとも付け加えた。

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