「威圧」か「信望」か、出世の道には2つあり? 優秀な上司の力とは

2013.01.29 Tue posted at 12:34 JST

(CNN) 組織のトップに登り詰めたければ、好かれるよりも恐れられる方が良いのかもしれない。最近の研究によれば、高圧的な人であっても、スキルが高く知識豊富な人と同じくらいの割合で高い社会的地位に昇れることが明らかになった。

カナダ・バンクーバーのブリティッシュコロンビア大学での研究では2種類の実験を通じ、「威圧」(恐れを抱かせるための力や威嚇行為の行使)と、「信望」(尊敬を得るための専門性や技能の発揮)が、社会的な地位や影響力の獲得にどのように利用できるのかを調査した。

研究を主導したブリティシュコロンビア大学心理学部博士課程のジョウイ・チェン氏は、社会心理学における長年の「常識」では、リーダーになるには所属する組織に貢献し、自分を犠牲にして、専門的な能力を実践して見せなければならないと思われているが、実際はそうではないと指摘。

現実の職場などで人々が、利己的だったり、高圧的だったり、場合によっては特に有能ではない上司に対しても従うのは、そうしなければ悪い結果がもたらされると考えるからだという。

1つ目の実験では、191人の学生を4~6人のグループに分けて問題解決の演習に参加させ、それをビデオ録画した。そして、参加者同士で「影響力とリーダーシップ」と、「威圧」と「信望」を評価させたのだが、「威圧」と「信望」の高さと「影響力」の高さは比例するとの結果が出た。

2つ目の実験では、視線を追跡できる装置を装着した59人の別の参加者に1つ目の実験のビデオを見せた。ビデオの中の人たちで59人の視線をより多く集めたのは、「威圧」または「信望」が高いと評価されていた人たちであり、この人たちが、より強い「影響力」を持つことを示唆する結果となった。

またこの研究では、「威圧」を持つ人は、他人にあまり好かれてはいなくとも「影響力」を持つということも分かった。

チェン氏は、「影響力」を持つためには、人に好かれるだけでなく、スキルも兼ね備えて「信望」を得るか、あるいは、他人に嫌われ高圧的であっても恐れられるくらいでなければならないとの見方を示す。

幹部職向けの人材開発コンサルティング会社の社長ジョン・ボールドニ氏は、「信望」タイプの方が企業の中で出世して業績によって上級幹部になるべく育成される可能性が高いことが多いとしながらも、「有能な人物が必ずしも良いリーダーになれるとは限らない」と指摘。有能な人でも、自分の権限をどのように用いるべきかを理解して、人々が従いたくなるように他人とうまく付き合わなければならないという。

ボールドニ氏はまた、リーダーにとって「威圧」が重要であることには同意するが、行き過ぎると周りの人に嫌われ反発を呼び、いじめとも受け止められかねないと警告。同氏は「高圧的な人には臆病な人が多い」とも付け加えた。

ブリティッシュコロンビア大学のチェン氏は、誰でも「威圧」や「信望」を得られるが、個人差があるし、周りの状況にも左右されると指摘。「自分がどんな人間なのかや、相手がどんな人間なのかによって、どのような戦略を活用できるのかが決まってくる」と説明する。

長期的には「信望」の方が「威圧」よりもリーダーシップには有効だと考えられるかもしれないが、チェン氏の以前の研究では両者には差は見られなかった。

チェン氏のチームは現在、「威圧」のあるリーダーと「信望」を持つリーダーとでは、そのどちらが率いるグループの方がより優れた成果を上げるのかを研究している。

研究の初期段階では、私たちの直感とも一致する結果が出ているとチェン氏は指摘。急いで決定を下し仕事を完成させなければならない課題においては「威圧」のあるリーダーのグループが優れており、創造性をより求められ下位のメンバーからの情報も必要とされる課題においては「信望」のあるリーダーのグループが優れているという。

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