シリア、化学兵器ではなく暴動鎮圧用ガス使用か 米国務省

内戦開始後2度目の冬を迎える避難民。生き抜くための闘いは続く

2013.01.17 Thu posted at 18:56 JST

(CNN) 米政府高官は17日までに、シリアのアサド政権軍が中部ホムス市で昨年12月下旬、反体制派の掃討に化学兵器を使用したとする非政府機関(NGO)などの主張に関連し、米国務省の調査でこの事実を裏付ける証拠は得られなかったと述べた。

ただ、政府軍が暴動鎮圧用のガスを使った可能性はあると指摘した。

ホムスでの化学兵器の使用疑惑については、シリアで活動するNGO代表がトルコの米領事館に対し使われた可能性があるとの情報を寄せていた。さらに米外交政策に関するブログが今月15日、機密の公電を引用し、同市で12月23日に起きた戦闘で政府軍が投入したことを示す反論出来ない事例への言及があったとも伝えていた。

医師や活動家が「ガス」を吸い込んだ数十人の被害者が神経系や呼吸、胃腸の障害を訴えたと明かした後、トルコにある米領事館が調査を開始。米情報機関要員がインターネットで流れた攻撃の模様や患者の症状を示す画像などを分析。化学兵器専門家や同兵器の犠牲者の治療経験を持つ医師らにも参考意見を求め、シリア内の医師や活動家らとも面会して事情を聴く、真相解明に当たっていたという。

米政府高官によると、これら調査を踏まえ使用されたガスは暴動鎮圧用のもので体への永続的な悪影響を及ぼさないと結論付けられた。ただ、人口密集地区で用いられた場合、より危険な被害をもたらし、大気中に速く拡散しない種類と判明した。

シリアのアサド大統領

ガス攻撃を受けた住民ら約100人を診察したシリア人医師はCNNの取材に、症状の程度はガスに接した距離の長短により異なっていたと証言。近い距離でガスを浴びた患者には麻痺(まひ)や発作、筋肉のけいれん、一部の例では視力喪失の症状が出たとし、6人が死亡したとも報告した。

神経ガスのサリン被害の治療薬がこれらの患者に有効だったとも述べた。米政府高官は攻撃に使われたガスは化学兵器禁止条約で規制される人間を無力化するガス「エージェント15(Agent15)」による症状と似ていたが、後でこの兵器ではないと判明したと語った。シリア内の一部医師は使用されたガスは化学兵器と信じていたという。

トルコの外務省幹部はCNNに、ホムスでのガス攻撃を受け独自調査を実施したが、化学兵器が投入された事実はないことがわかったと語った。

長期化するシリア内戦を受けオバマ米政権は、アサド政権による化学兵器使用は一線を越えた行為と警告し、政策を転換した軍事介入も示唆していた。

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