老舗レコード店も経営破綻 音楽業界の未来は?

オックスフォード通りのHMV店=ロンドン

2013.01.17 Thu posted at 16:01 JST

ロンドン(CNN) 経営難に陥っていた音楽・映像ソフト販売大手の英HMVが先ごろ自力再建を断念した。HMVのような音楽ソフト販売店大手も経営に行き詰るなど、CDなどを店舗で販売する業態が苦戦するなかで、インターネットを通じた音楽配信がますます存在感を高めている。

HMVが最初の店をロンドンのオックスフォード通りに開いたのは1921年のこと。当時は蓄音機や楽譜、レコードを商っていた。60年代にビートルズは、初めてのデモテープをHMVでカットした。80年代には世界最大規模の旗艦店をロンドンにオープンし、開店イベントには「ライブ・エイド」の仕掛け人でもあるミュージシャンのボブ・ゲルドフが招かれた。

そんな老舗がなぜ経営破綻(はたん)に追い込まれたのだろうか。

国際レコード産業連盟(IFPI)によれば、CDなどの録音媒体の販売数は2007年の約1億4580万枚から11年には9200万枚へと20%以上も減少。この間にインターネットを通じた音楽配信は2倍以上の伸びを示した。

英国のCDと音楽配信を合わせた音楽ソフトの販売市場でHMVは22.9%のシェアを持つ最大手だ。だがその地位も、米アマゾン(シェア22.4%)や米アップルのiTunes(アイチューンズ、同12.8%)に脅かされていた。

HMVもネットストアを開いたり、音楽配信会社に出資するなどの手を打ってきたが、遅きに失したとの見方が強い。

英市場調査会社コンルミノの小売り調査部門のディレクター、マット・パイナー氏は、HMVが業界の変化についていけず、オンライン販売に重点を置いた時点で、既に他社が基盤を確立していたと説明する。

コンルミノの試算によれば、2015年までに音楽とビデオの販売の約90%はネット上で行われる見通しだ。パイナー氏は「2020年代の終わりには、CDなどは過去の遺物となるだろう」と指摘する。

しかし、オンライン販売や音楽のダウンロードは、伝統的なレコード店にある「ロマン」に欠けるとの見方もある。

雑誌編集者のポール・ストークス氏は、オンラインショッピングとは違い店舗に行くことで実際に商品が並んでいるのを見られることは重要だと指摘する。ストークス氏はまた、店舗に行けば消費者は店員と会話をし、その中から情報を得ることもできると語る。

一方で、政府の歳出削減や多国籍企業による過度の節税に反対する団体「UKアンカット」によれば、HMVの経営破綻はアマゾンのような多国籍企業と比べて税制上で不利だったことが大きな原因だとの見方を示す。キャメロン英首相は昨年12月、多国籍企業が現行の税制を利用して納税額を抑えている問題について「最優先課題」として取り組むと述べている。

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