(CNN) 運転手のいない自走車が公道を走り、空の旅は格安化とサービスの有料化が進む一方でユニークなデザインの新型機が登場、鉄道は一層身近な存在になる――。米国の交通手段は2022年までの10年間で大きく様変わりする見通しだ。
空の旅
航空業界のトレンドは、格安化とアラカルト方式のサービスへと向かいつつある。あらゆるサービスが航空運賃に含まれていた時代は終わり、枕、軽食、窓側の座席など、あらゆるサービスが有料になるかもしれないと専門家は予想する。
航空消費者問題の専門家、ブレット・スナイダー氏は、格安航空の普及は長い目で見れば消費者にとってマイナスかもしれないとの見方だ。航空会社が大きな利益を上げる一方で、乗客は最も基本的と思えるサービスにまで別料金を取られるようになっている。
その極端な例として、欧州のライアンエアの経営者は、機内トイレ使用の有料化や、機内に立ち乗りコーナーを設けることに言及した。
こうした格安モデルが成功すれば、他社も追随して格安競争が激化し、航空各社はできる限りのものを切り詰めて利益を追求するだろうとスナイダー氏は危惧する。
いずれ何のサービスも受けられないエコノミークラスの乗客と、あらゆるサービスが提供される「スーパーエリート」乗客との二極分化が進むかもしれないと予想する専門家もいる。
機内無線LANや、娯楽設備のパーソナライズ化を求める乗客も増えそうだ。映画は機内のメディアサーバーに保存するか、専門業者のウェブサイト経由で見るようになるかもしれない。充電用の電源はファーストクラスだけでなく、全席で標準装備にすべきだと専門家はいう。
環境への配慮から、機体は燃費性能の高さが求められている。ボーイングの新型機「787ドリームライナー」は、米国でも昨年11月に就航した。
カナダの航空機メーカー、ボンバルディアは、ギア切り替え式の変速エンジンを搭載した「Cシリーズ」を開発、競合機に比べて20%以上の燃料消費削減を目指す。同機は2014年に初就航する見通しだ。
米航空宇宙局(NASA)は燃費性能を高めた未来の航空機のアイデアを航空大手から募った。これに応えてロッキード・マーティンはボックス型の翼を持つ機体を、ボーイングとノースロップ・グラマンは「空飛ぶ翼」を設計している。まだアイデアの域を出ない段階だが、もし経済状況が許せば、25年までに実現する可能性もあるとNASAは話している。
陸の旅
カリフォルニアとネバダの両州は、運転手のいない自走車を認める法律を通過させた。自走車は、最も安全で効率の高い速度とルートをコンピューターで計算しながら走行し、事故の減少や渋滞の解消を目指す。ただし両州とも、万が一の時にはハンドルを握れるよう、運転席に人間が乗ることを義務付けている。
自走車の開発を手掛ける米インターネット大手のグーグルによれば、自走車は5年以内に実用化され、カリフォルニア州の公道を走るようになる見通しだ。
一方、欧州の自動車大手ボルボは欧州連合(EU)と協力して、自走車を無線信号で連結し、人間が運転する先頭車両と連携させる「ロードトレイン」の構想を進めている。幹線道路の渋滞を解消し、燃料を節約する狙い。EUによれば、ロードトレインは早ければ22年に欧州の主要道に登場するかもしれない。
ロードトレインの実験を行ったボルボの科学者は、コンピューター制御の自走車の運転席に座った経験について、「最初は不思議な感覚だったが、30秒もすると慣れた」と振り返る。そのうちに道路から目を離し、携帯メールを読んだり書いたりするようになった。
ただし居眠りをするのは勧められないという。ロードトレインは異変を察知すると大音量の警報が鳴り、運転席が激しく振動する。運転手は10秒以内に運転を引き継がなければならない。
鉄道の旅
米国では列車を利用する乗客が増え、主要都市を結ぶ長距離列車アムトラックの今年の乗客数は、営業開始以来の最多を記録した。
サービスの向上や予算の増額により、車ではなく鉄道を利用する人は今後も増加が期待できるという。カリフォルニア、イリノイ、ノースカロライナ、バージニアなどの各州では、09年の米政府の景気刺激策の一環として、地域の各都市を結ぶ身近な輸送手段として鉄道網の整備が進んでいる。
それでもまだ、米国で列車を利用する乗客数は、アムトラックや通勤列車を合わせても年間約5億人程度。これと比較すると英国は11年の実績で13億5000万人、ドイツやインド、中国、フランス、ロシア、韓国なども10億人を超えている。
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