スマホやSNSは当たり前 「デジタルネイティブ」が住む新世界とは

2013.01.01 Tue posted at 16:29 JST

(CNN) 「原住民」と「移民」との戦いは原住民の勝利で終わりつつあるようだ。それは、弾や槍ではなく、スマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」などを使った戦いだった。

IT関連の人気作家マーク・プレンスキー氏が「デジタルネイティブ(デジタル世界の原住民)」と2001年に名付けた、生まれつきIT製品などに接している若い世代が増加している。

昔はアナログの旧世界に居住していたがデジタル世界に移住することになった「デジタル移民」世代は、デジタル化に対してラッダイト運動(1800年代初頭に英国で起きた機械打ちこわし運動)などは起こしてはいないものの、IT革命への適応には苦しんでいる。

これからは、IT環境の格差が新たな戦いを誘発する可能性がある。

プレンスキー氏によれば、過去10年間のIT関連の爆発的技術進化は、コンピューターと携帯端末が人の肉体や精神の延長となり、人間がサイボーグ化する新たな共生の時代の始まりだという。

技術革新への適応のための人々の苦闘

プレンスキー氏はまた、今日の技術進化は歴史上最も速いと指摘する。

かつては、技術革新がある程度進むと頭打ちとなり、停滞期が訪れた。しかし、現在では「フェイスブック」や「ツイッター」「ユーチューブ」「スカイプ」など様々なメディアが登場し、技術革新は停滞もなくますます加速するのみだ。人々は常に急速な技術進化に後れを取ることになり、それに対処しなければならないことが大きなストレスにつながる。

新常識

今日、人との付き合いのためにはソーシャルメディアを巧みに利用しなければならなくなっている。デジタルネイティブにとってこれは当たり前だが、デジタル移民にはかなり困難で、いわば全く新しい言語を覚えるようなものだ。

プレンスキー氏は、ペトレイアス前CIA(米中央情報局)長官の不倫がFBI(米連邦捜査局)によるメールの暴露で明るみになったケースを、電子メールなどのプライバシーが自動的に守られると信じるデジタル移民による「愚行」の例として挙げる。

人は変化には本能的に的確に適応出来るが、若者とは違って年を取った人は変化への適応にはより苦労するだろうともプレンスキー氏は述べている。

デジタルがもたらす貧富の格差

IT製品・インフラが世界中に広まる中で、関連する知識や環境の格差が新たに貧富の格差を生み出しつつある。

インターネットやその社会的影響について調査・提言を行っているインドのNGO(非政府組織)のディレクターであるニシャント・シャー氏は、世代によりデジタルネイティブとデジタル移民に区分するプレンスキー氏の考え方は、発展途上国には必ずしも当てはまらないと指摘。ITに関する環境や知識の差が新たな階級制度が生み出すことを懸念している。

世界銀行によれば、インドでは人口の3分の2以上が1日当たり2ドル(約160円)未満で暮らしている。しかし、国連の調査によれば、人口の半分以上が携帯電話を保有する一方、トイレのある住宅に住んでいるのは人口の半分に満たない。

シャー氏は、電子機器に対する理解力の差によって生まれる階層や、デジタル技術を利用できるかどうかによって形作られる階級制度を懸念している。

発展途上国に必要なもの

無線通信ネットワークが世界中に広がり、欧米のIT企業は、多くの人口を抱える国への進出を目論んでいる。しかしシャー氏は、技術やITインフラが行き渡るだけでは不十分で、若者たちへのIT教育も必要であり、そうでなければデジタル世界での落ちこぼれを生んでしまうと訴える。

一方でプレンスキー氏は、現状ではデジタル技術を手に入れられない人でも近い将来にはそれを入手することが可能となるので、「ネットワーク化された地球」は、発展途上国がデジタル格差を縮小する前兆だと信じている。

2020年の世界

プレンスキー氏は、2020年までには全ての人々が世界中の情報やニュースに常時アクセス可能な状況が実現されると予測している。

一方、シャー氏は「私たちが生きている現在は、過去の人々が想像したものだ」として、未来社会はSF作品が描くようなものかもしれないと述べ、未来の技術が、神聖なもの、人間にとって大切なものを守るものになってほしいと付け加えた。

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