「福島の教訓」に学ぶ原発、天然ガス利用促す声も 米国

電力会社は福島の事故から多くを学んだと語る

2012.12.03 Mon posted at 17:37 JST

(CNN) 米国で数十年ぶりとなる原発の新設を前に、東京電力福島第1原子力発電所で起きた事故の教訓を取り入れる動きが広がっている。一方で、天然ガスなど比較的安価なエネルギー源を活用すべきだとの声も強まっている。

米電力大手のサザン・カンパニーは、ジョージア州ウェインズボロのボーグル原発に原子炉2基を新設予定。同社幹部のチェリ・コリンズ氏は、「福島(第1原発の事故)から多くを学び、その教訓を取り入れてきた」と強調する。

米国は今年に入り、ボーグル原発の2基を含め、13基の原子炉新設を承認した。米国で原子炉の新設が承認されたのは、スリーマイル島の原発事故が起きる前年の78年以来。建設は1990年以来となる。

ボーグル原発は1989年から稼働している2基の原子炉に加え、2016年までに3号機、17年までに4号機の運転開始を目指す。今年10月に同州で開かれた年次カンファレンスでサザン社が行った説明によれば、新しい原子炉「ウエスチングハウスAP1000」は新型の設計を採用し、福島第1原発のような事故の発生を防ぐための安全対策を盛り込んだ。

AP1000は、外部電源喪失などの緊急時にも運転員が操作しなくても自動的に原子炉の冷却が維持される仕組みなどを備えるという。こうした設計の変更によって、自然災害が起きた場合に従業員や地域社会を守ることを目指すという。

2005年の大型ハリケーン「カトリーナ」では多大な被害が出た

安全性の確保は最重要課題だが、天候をコントロールすることは不可能であり、2011年に東北地方を襲った地震と津波、あるいは2005年に米南部を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」のような自然災害に備えることは難しいとサザン社はいう。

同社の技術担当者は、原子炉の被害を食い止める目的で、洪水や地震、火災、津波といった事態を想定した実験も行ったと説明。米原子力規制委員会(NRC)の広報も、「ボーグル原発の原子炉は、安全機能を強化した先端の設計を採用している」と語った。

NRCは今年3月12日、国内の原発に対し、大規模な自然災害によって電力が失われた場合の対策を立てるなど、福島第1原発の教訓を取り入れた対策を義務付ける方針を決定。さらに、こうした対策を実行に移すため、「日本の教訓に学ぶプロジェクト理事会」も創設している。

これに対し、科学者でつくる監視団体のエドウィン・ライマン氏は、原子炉の新設には賛成も反対もしないと断った上で、「AP1000の設計は、現在稼働中の原子炉に比べて安全性が高いとは思えない」「説明されている機能は、想定内の事故が発生した場合にしか機能せず、福島で起きたような重大事故には対応できない」と懸念を示す。

さらに、原子炉の安全対策以前に、天然ガスというもっと安価なエネルギー源があるのに、なぜ原子炉を新設するのかという疑問もある。

サザン・カンパニーのボーグル原発

ライマン氏は、ボーグル原発の原子炉2基の新設に140億ドルという膨大な費用がかかることを挙げ、「低コストの天然ガスに比べ、原発がコスト効率的とはいえないことを物語るものだ」と指摘する。

米エネルギー情報局によれば、低コストの掘削技術や生産の増大などにより、天然ガスは今年4月に初めて石炭を上回り、米国で筆頭のエネルギー源となっている。

一方、サザン社のコリンズ氏は、天然ガスによるエネルギー供給は不安定であり、長期的なエネルギー源としては原発の方が優れていると主張する。

欧州では、福島第1原発の事故を受けて原発依存を不安視する声が高まった。欧州委員会によると、これまでにベルギーとドイツが原発からの完全撤退を決め、イタリアは原発を導入する計画を撤回している。

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