中国が抱える5つの課題 専門家に聞く

2012.11.30 Fri posted at 17:23 JST

香港(CNN) 中国の胡錦濤(フーチンタオ)国家主席は今月開催された第18回共産党大会で、党にまん延する不正や腐敗について、「共産党を崩壊させ中国を没落させかねない」として厳しく批判した。

5年後の次期党大会では、新たに選出された習近平(シーチンピン)総書記が、この世界最大の人口を擁する国が抱える諸問題について考えを表明することになる。

CNNは5人の専門家に、中国が直面する喫緊の課題は何かを聞いた。

1.派閥と既得権益

今年の共産党大会開催に伴い、政治局常務委員会内部でのイデオロギーや人間関係などによる微妙な派閥区分について多くの分析がなされた。だが派閥対立が共産党を改革へと導く決定要因になるのだろうか。

香港中文大学のウィリー・ラム助教授によると、1949年の中華人民共和国建国前から共産党内にはイデオロギーによる路線対立があり、1989年の天安門事件の前後まではそれが改革の道筋を決める重大な役割を果たしていた。

だがその後様相が変わってきたという。90年代初めからは、江沢民(チアンツォーミン)前国家主席が率いる「上海閥」、胡錦濤現国家主席が率いる共産主義青年団派、党老幹部の子弟からなり習近平次期国家主席が率いる「太子党」という3大派閥が形成された。

一見路線に違いがあると思われる3派閥だが、国家の主要な目標については強固な意見の一致がある。政治的には共産党が独占的に権力を掌握し続けること、経済的には石油から銀行や通信まで重要分野で政府系企業が独占を維持することだ。

現在、党幹部の親族の多くは、有力企業に入ったり金融や不動産分野で事業を立ち上げたりして、発展する中国経済の利益を享受している。この状況下では、政治や経済の現状に変化をもたらすどんな改革も、既得権益にメスを入れる重大な脅威となる。

ラム氏は、有意義な政治的変革が実現する可能性は小さくなってきていると分析する。

2.消費主導経済への移行

米テキサスA&M大学のリ・ガン教授は2011年、中国の家計資産に関するこれまでで最大規模の調査を実施した。その結果、上位10%の高額所得者が資産の大部分を保有する一方、半数超の家計でほとんど貯蓄していないことがわかった。貯蓄率が低いことは、消費に回すための十分な所得がないことを示唆しているという。

同氏は、中国が輸出や設備投資依存の経済から個人消費主導へと移行するには、貧困層の所得を向上させ、支出額を上げられるかどうかがカギになると語る。

沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)

3.領土紛争

国際紛争に関する提言等を行う非政府組織(NGO)「国際危機グループ」のステファニー・クラインアルブランド氏は、領土紛争において、中国は右の頬を打たれたら左の頬を差し出すような国ではないものの、「平和的な台頭」原則を放棄したという印象を国際社会に与えることは避けたがっていると分析する。

中国は今、挑発とみられる行為に対して自己の立場を断固として主張して対応する方針を採っていると同氏は指摘。これにより、現状をより自国の利益に沿う形に変えようとしていて、東シナ海での日本による尖閣諸島国有化への反発はその例だと語る。

4.男女比率の偏り

中国政府は人口急増を食い止めるために、1970年代末に一人っ子政策を導入した。それ以降、男子を生むのを好む風潮を背景に、新生児の男女比に大きな偏りが生じた。何百万人もの男性が配偶者を見つける見通しが立たないと、豪ニューサウスウェールズ大学のロブ・ブルックス教授は語る。

韓国にならい、性別に基づいた偏った人工妊娠中絶をなくすことが中国にとって喫緊の課題だと同氏は指摘する。

5.「3R」の推進

労働集約型産業による安価な輸出品の大量生産で経済成長した中国だが、その裏側では環境汚染が拡大している。

作家のジェフ・ヒスコック氏は、13億5000万人の中国人に安全な食品、水と大気を保証することが指導部にとって大きな課題であると語る。

北京や東北部の水不足、重慶や成都など内陸部大都市の深刻な大気汚染、鉱山や工場からの汚水による農地の汚染、南部の広い地域での酸性雨による土壌への影響、家畜の伝染病、無責任なメーカーによる汚染食品の販売などをヒスコック氏は列挙する。

「リデュース(廃棄物の削減)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)」を意味する「3R」の推進により、資源を有効利用し、環境改善を実現することが重要だと同氏は語る。

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