(CNN) 人が一生のうち平均3年間を過ごすというトイレ。しかし世界の人口の3分の1強に当たる25億人が、いまだに衛生的で安全なトイレのない生活を送っている――。「世界トイレの日」の19日、そうした現状を知ってもらい、世界トイレ危機の解決を促そうというキャンペーンが行われた。
英慈善団体のウォーターエイドによると、トイレがない地域はアフリカのサハラ砂漠以南とアジアの国が大半を占め、アジアの人口の半分以上は不衛生な環境に置かれているという。こうした地域の住民は、地面や川や道路脇などの屋外や、不衛生な施設などで用を足すほかない。
インドのマディヤプラデシュ州のスラム街に暮らす女性は、住民は近くの丘に行って用を足していると話し、「今は樹木がなくプライバシーを守れないので、夜になるのを待たなければならない。年寄りには厳しいし、大人の女性は性的暴行を受ける危険がある」と訴える。
今年の世界トイレの日では、特にこうした女性にとっての危険にスポットを当てた。ウォーターエイドによれば、女性は感染症の危険だけでなく、屋外で用を足すことにより、嫌がらせや暴行などの危険にもさらされる。
モザンビークに住む女性は、徒歩で15分ほどの距離にある橋を渡って茂みまで行かなければならないと語った。特に夜間は非常に危険で、女性や子どもが刃物で襲われて殺されたり、女性がレイプされる事件も起きているという。
さらに衛生面の問題も深刻だ。汚物を処理する下水施設がなければ、コレラや腸チフスなどの感染が広がる恐れがある。国連の統計によると、不衛生な環境が原因で死亡する人は年間270万人を超す。下痢性の疾患で死亡する途上国の乳幼児は、エイズとマラリア、はしかの死者を合わせたよりも多く、世界保健機構(WHO)の統計でも、下痢性疾患は5歳未満の幼児の死因として2番目に挙がっている。
世界銀行の推計では、こうした衛生問題の代償はアフリカ諸国で年間55億ドル、インドでは538億ドルにも上る。一方、世界トイレの日の推進団体によれば、衛生設備はコスト効率が極めて高く、1ドルの投資に対して5ドルの見返りがあるという。世界のトイレ危機の解決は、強力な政治的リーダーシップと、衛生インフラおよび教育への投資にかかっていると同団体は訴えている。