中国の「闇の留置所」、中央政府への請願者軟禁が横行か

2012.11.22 Thu posted at 09:00 JST

(CNN) 目覚しい経済発展を遂げる中国だが、その裏側では、立ち退きを強制された農民らがその不満を中央政府にぶつけようと行動を起こすと、地方当局者が彼らをホテルなどに軟禁するケースが後を絶たないという。こうした軟禁場所は「闇の留置所」と呼ばれ、請願者を監視・軟禁することが1つの「産業」にまで発展しているようだ。

夫とともに私服警官に拘束されたという52歳の女性はCNNの取材に対し、上海にあるホテルに8日間軟禁されたと語った。

女性によると、2005年に上海浦東国際空港の拡張工事に伴い夫妻の農場は取り壊しにあった。夫妻は今年3月、その補償について抗議するため北京に向かったが、北京到着時に私服警官に拘束され、上海に強制的に連れ戻された。その後、夫妻はホテルの別々の部屋に軟禁されたという。

女性は一度、ホテルの部屋のベランダから逃げ出そうとしたものの、7人以上の監視員がそれを阻止し、ベッドに拘束されたという。

この女性は、CNNが軟禁経験について取材した5人のうちの1人だ。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、中国では人々を正当な理由なく軟禁することが以前から行われているという。軟禁場所には、ホテルやホームレス向けの救護施設、精神病院、目立たない政府の施設などが利用され、「闇の留置所」と呼ばれている。

人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、中国の地方政府は巨額の負債を減らそうと、住民の土地を収用し開発業者に売り渡す動きがあり、暴力的な強制立ち退きが増えているという。

HRWの報告書は、住民が不満を持ち地元の役人に対する訴えを起こしても、地方の裁判所はそれを取り合わないと指摘する。その結果、住民たちは北京の中央政府に嘆願に行こうとする。

だが地元の役人にとって、中央政府に請願を出されることは大きな問題となる。請願の数に応じて、役人は降格などの処分を受ける可能性がある。その結果、人々を北京に出発する前や到着した時点で拘束し、邪魔するという。

こうした「不満分子」を監視し、軟禁することは1つの産業にまでなっている。治安当局は下請け業者を雇い、軟禁1人当たり所定の金額を払っているという。HRWの専門家は、こうした活動が巨大な地下経済になっていると指摘する。

天安門広場を警備する当局者

冒頭の女性によると、軟禁されたのは、英ホテルチェーン大手インターコンチネンタル・ホテル・グループ(IHG)が運営する「ホリデイ・イン・エクスプレス南匯嘴」。HRWの専門家は、欧米系のホテルが軟禁場所に利用されたという情報は初めてで、「注目に値する」と指摘する。

IHG側はCNNの取材に対して、今年3月にホテルの客が軟禁されていたことを示すものは何もないと説明。徹底的な調査を行った結果、「ホテルのオーナーが(夫妻の)今回の滞在について知っていたり、地元政府と協力したりしたという証拠は何も得られていない。ホテルは中国の法令に基づき運営されている」と回答した。他の中国国内にあるIHGのホテルと同様、同ホテルは地元業者が所有しているが、運営はIHGが担っている。

CNNが夫妻の地元当局に問い合わせたところ、夫妻の請願については知らないと語った上で「請願の手続きは開かれている」と回答。中央政府の公安局に夫妻の主張に対するコメントを求めたが、今のところ回答はない。中央政府は昨年、暴力を伴う立ち退きを不法とし、補償を含む新たな保護手段を提供する規則を発表している。

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