米国は落下を回避できるのか 世界が見つめる「財政の崖」

2012.11.11 Sun posted at 17:44 JST

(CNN) オバマ米大統領の支持者が大統領選挙での勝利を祝う中で、世界中の実業界や金融政策当局のリーダーも大統領に祝辞を送った。しかし、世界経済のリーダーは同時に、(歳出削減と増税が自動的に発動される)「財政の崖」という問題へのワシントンの取り組みを、じりじりしながら見つめている。

欧州連合(EU)からは、バローゾ欧州委員会委員長とファンロンパイ首脳会議常任議長が連名で、大統領再選への祝意とともに、安全保障や経済上の世界の諸問題に共同で対処するためのEUと米国との関係のさらなる強化を訴えるメッセージを送った。

一方で、実業界のリーダーの中には、オバマ大統領の再選に否定的な見方をするものもいるが、党派別の懸念を超えて金融市場は、米国が「財政の崖」問題解決のために何をするのかを見守っている。

仮に年末までに対策が講じられなければ、10年間で7兆ドルにも上る歳出削減と増税が自動的に発動されるため、米国経済を景気後退につき落としかねないと専門家は警告している。

「財政の崖」問題については、真の脅威ではなく、連邦予算をめぐる2011年夏の瀬戸際の攻防と同様の一種の「チキンゲーム」が議会で再び繰り広げられているためだとの指摘もある。11年には米国は、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の最上級格付「AAA」を失っている。

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は先月のIMF年次総会で、今回は何とか切り抜けられると思われているが、それだけは不十分だなどと懸念を表明。

短期的な問題の解決についても大きな不透明感があるが、世界は連邦政府債務や財政赤字などの解決についての中期的な米国の戦略も知りたがっているとの見方を示した。

オバマ大統領は「財政の崖」を回避できるか

ユーロ圏経済が減速するなか、中国もまた、米国が「財政の崖」から転落して経済に悪影響を与えることを懸念している。

この問題は、共和党の大統領候補だったミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が、大統領に当選したら就任の日に中国を為替操作国に指定すると発言していたような、米大統領選挙での厳しい対中発言よりもはるかに大きな懸念であるともいわれている。

中国国営新華社通信によると、今月上旬にメキシコ市で開催された20カ国・地域(G20)財務大臣・中央銀行総裁会議に参加した中国の財務次官は、米国が景気後退に陥ると、その悪影響により世界経済が不安定化し、経済の回復はより困難になると語っている。

中国・上海の市場調査会社でマネジングディレクターを務めるシャウン・レイン氏は、中国の人々がオバマ大統領に対し、中国との関係においてより建設的な態度で臨むことを望んでいると指摘。中国の人々は、オバマ氏が米大統領選で有権者を引きつけるために、中国が為替操作国だとの見方を示したり、中国を世界貿易機関(WTO)に提訴して厳しい姿勢を見せたりしていると考えているという。

レイン氏はまた、オバマ大統領が2008年に当選したときには歓迎する声が強かったものの、アジアでの米国の軍事的プレゼンス強化を公約したり、東シナ海や南シナ海の領土紛争に介入したりするなど、大統領が中国と正しい形で向き合っていないために、彼が話をした中国政府幹部もオバマ大統領には非常に落胆しているとも語っている。

中国での賃金引き上げや内需拡大のためには、対米輸出の継続や米国からの多額の投資維持が必要なため、大統領が誰であっても中国には米国経済の繁栄が必要だとレイン氏は指摘。「中国では、オバマ大統領が本当は、経済を発展させる方法を知らないのではという懸念もある」と付け加えた。

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