進化するコンピューター、人と機械の不思議な関係

スタンフォード大学の自走式自動車「シェリー」

2012.11.02 Fri posted at 16:26 JST

(CNN) 技術的な進歩により「人間のような」機能や特徴を備えるようになった機械を、人間はかわいいとか気味が悪いとか考えたり、信頼したり、腹を立てたりしている。カリフォルニア州で開催された「ビッグ・サイエンス・サミット」では、そんなコンピューターやロボットと人間の関係についての興味深い研究や実例が紹介された。

ひとつは人間を怒らせた実例。コンピューターとセンサーを内蔵した室内用温度計「ネスト」は当初、住民の行動を学習してエネルギー効率が最適になるように冷暖房設備の稼働スケジュールを勝手に設定するよう作られていた。

だがユーザーは、肌寒いと思えば手動で暖房を入れたり強くしたりし、機械に指示されることにも不快感を抱いた。結局、ネストの仕様変更を余儀なくされ、ユーザーの好みや生活パターンを優先させることになった。

スタンフォード・ヒューマン・コンピューター・インタラクション(HCI)グループのウェンディ・ジュー氏は自動ドアを使った実験を行った。ゆっくり開くドア、一息置いてから全開するドア、いきなり全開するドアを用意し、人々の反応をみた。一息置いてから全開するドアは「開ける前に考えている」かの印象を与え、他のドアより賢いと受け取った人が多かったという。

他にも、公共の場に置かれたインターネット接続端末に手を振る動きをする機械の「手」をつけたら使う人が倍増した例もあった。それだけで親しみやすさがアップしたわけだ。

スタンフォード大学の自走式自動車「シェリー」

スタンフォード大学では自走式自動車の研究も行っている。白い「アウディTTS」を改造したロボットカーで「シェリー」と名付けられている。ユタ州西部の幅の広い一本道や、コロラド州のくねくね曲がった山道を走らせたり、レース場で時速約185キロで走らせてみたりしたが、今のところ無事故だ。

それでも、同研究を率いるクリス・ガーデス氏は「完全なソフトウエアを作るのは難しい」と語る。例えばハロウィーンの仮装をした人やさまざまな人間の姿を正確に「歩行者」と認識しなければならない。

また一般に、自走式自動車の抱える大きな問題の1つは、乗車する人からの信頼を得ることだといわれる。しかし同大学が行った研究では、人は自走式自動車を信用しきっているという結果がでている。自走式自動車技術の一部は事故防止機能として通常の自動車に取り入れられつつある。だが、安心するあまりドライバーの注意がおざなりになってしまったら本末転倒だ。

ロボット開発においては、ハンソン・ロボティクス社の最高経営責任者(CEO)、デービッド・ハンソン氏は人間並みの知能を持つ人間そっくりのロボットを作ろうとしている。

見た目に関しては完成にかなり近づいているという。アニメーションに関する知識と特殊素材を使い、ハンソン氏は本物そっくりの人間の頭を作り上げている。顔のかすかな動きや表情も見事に再現されている。ロボットには性格データも入力され、対話データベースを元にリアルタイムの会話もできる。

ハンソン氏の理想は「人間関係」が築けるほど人間らしいロボットを作ることだという。

もっとも、誰もがそこまで深い関係をロボットとまで築きたいと思っているわけではないようだ。スタンフォード大学のジュー氏は、「そういう深い関係を持ちたいと思える相手の数は知れている。10人くらいだろう」と述べる。

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