南極の氷河下に眠る湖を探索、地球外生命体の手がかりにも期待 英チーム

2012.10.31 Wed posted at 17:03 JST

ロンドン(CNN) 南極の氷河の下に閉じ込められた50万年前の湖を探索し、生命存在の手がかりを探ろうというプロジェクトを、英国の大学などでつくる研究チームが進めている。12月にも氷河の掘削に着手する計画だ。

プロジェクトには英国の8大学と環境調査センター2機関が参加。南極の西南極氷床で約3キロ掘削して氷河の下にあるエルスワース湖に到達し、水と堆積物のサンプルを採取する。

エルスワース湖は南極の氷河の下に約400あるといわれる湖の1つで、長さ約10キロ、幅2~3キロほどの大きさ。上部からの圧力と地底からの地熱により、液体の水が保たれている。

氷河に閉じ込められた湖には、未知の微生物が存在すると考えられており、研究チームによれば、細菌やウイルス、単細胞微生物、さらには複雑な細胞組織を持つ真核生物が見つかる可能性もある。

こうした微生物は、地球上の生命の起源や生存条件についての謎を解く鍵を秘めると同時に、例えば土星や木星の衛星の地下にあるといわれる湖の中などに、地球外生命体が存在できる条件を探る手がかりにもなる。

NASAの探査機カッシーニが捉えた土星の衛星タイタンの画像=NASA/JPL/USGS提供

また、可能性は低いものの、湖に生命が一切存在しないこともあり得る。そうなれば、地球上で水のある所には生命があるという定説を覆すことになり、科学的な興味は深まる。

プロジェクトは英ブリストル大学のシーガート氏が16年がかりで構想を温めてきた。目標は、「考えられる限り最も極端な場所での生命と水との関係を探る」ことだと同氏は話す。

氷河の底に閉じ込められた水は、大気から隔絶され、完全な闇の中にあり、強い圧力がかかっている。氷河によって、地球上の液体の流れや大気の流れとも隔てられている。湖底の堆積物を調べれば、地球の気候変動についての情報を得られるかもしれない。

エルスワース湖の名は、シーガート氏が米国の探検家リンカーン・エルスワース氏にちなんで2004年に命名した。湖を探索する構想は1996年からあったが、地下の湖の水を汚染することなく氷床を掘削できる技術の開発にこれまでかかったという。

この技術は宇宙時代の「クリーンテクノロジー」を結集して開発され、手術器具並みの滅菌性を実現。セ氏90度の熱水ドリルを使って氷河を掘り下げる。

実際の作業では3日間かけて長さ3キロ、幅360ミリの穴を掘り、この穴からチタン製の探査機を湖に挿入、先端に取り付けた器具を湖底に差し込んで堆積物を採取する。

さらに、一定の間隔を置いて50ミリリットルずつサンプルを採取。最適な採取場所を特定するために、センサーを使ってデータを地上に送信する。この作業は、穴が再凍結してふさがるまでの24時間以内に行う必要がある。

プロジェクトの第1段階として、今年初めに先遣隊が70トンあまりの機材や補給物資を掘削予定地まで搬入済み。掘削作業は12月14日に開始し、18日までに最初のサンプルを入手したい考えだ。ただしスケジュールは氷の状態に左右される。プロジェクトチームはウェブサイトと交流サイト(SNS)のフェイスブック、ツイッターで進捗(しんちょく)状況を報告する予定。

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