子どもの発育阻害は「静かなる危機」 デービッド・ベッカム氏が特別寄稿

ユニセフ親善大使のデービッド・ベッカム氏

2012.10.22 Mon posted at 17:06 JST

カリフォルニア州ロサンゼルス(CNN) 新聞を開き、健全な発育を遂げるための適切な栄養を摂取しなかったために体や脳に永久に残るダメージを負ってしまった若い子どもの記事を読むことを想像してほしい。

きっと憤慨するだろう。しかし、ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)によれば、これは全世界の約1億7000万人の発育阻害の子どもたちにとっての現実だ。

これは、あまりに長い間、あまりにも注目されずにきた、静かなる危機だ。だからこそ、私は、この問題について、認識を高め、栄養不足と子どもたちの発育阻害という静かなる緊急事態に対処すべく行動をとるよう呼びかけることについて支援を行っている。そして、あなたたちもそうすべきだ。

発育阻害は、生後1000日の間に子どもが適切な栄養を摂取できなかったときに起こる。子どもの脳や体に対するダメージは永続する。そうした子どもたちは、初めから適切な栄養を取っていたら到達したであろう水準まで学習することができなくなる。これは、最長で3年分の学習期間が失われる可能性があることを意味する。

発育阻害に対して行動を起こすことは、正しい行動であるだけでなく、賢い行動だ。一部の国では、子どもの半数以上が発育阻害であり、このことによって後年、彼らの収入は減り、国の経済活動にも大きな影響を及ぼす。

私がアフリカ西部シエラレオネでわかったのは、空腹の子どもの目をのぞき込みながら心動かされずにいるということは不可能だということだ。4人の子どもの父親として、何百万人もの子どもたちが不必要に苦しんでおり、しかも、簡単で安価な解決策で発育阻害を食い止めることができて、子どもたちの命を救い彼らの人生を変えられると分かっているのに、傍観することは私にはできない。

難民キャンプで食事を取る親子=2012年、ケニア

そういった解決策の中には、妊婦に適切な栄養を取らせることや生後6カ月の間は母乳で育てること、ビタミンAのサプリメントを含む適切な栄養を子どもたち摂取させることなどが挙げられる。

良い知らせは、昨年だけでも、ますます多くの国が、発育阻害を減らすための取り組みを進めていることだ。私たちは今、それ以外の国の政府にも同様の取り組みを行うよう促すことが必要だ。私は、ユニセフやそのパートナーが、どのようにして子どもや母親の命を救うための支援を行っているかを直接目にしているが、さらなる支援が必要だ。

8月のロンドン夏季五輪開幕の前日、私は英国のキャメロン首相と会って、子どもの栄養失調や発育阻害に重点的に取り組むよう要請した。

私は、キャメロン首相や世界各国の指導者に対して、この危機に対処することを求めた、60を超えるユニセフの大使や著名な支持者、1万7000の公の支援者が署名した手紙を届けた。全ての眼差しが夢を実現しようとするスポーツ選手の上に注がれるなか、同じように、ただ夢を実現できるようになりたいと願う世界中の何百万という子どもたちを支援するよう求めるにはぴったりのタイミングだった。

デービッド・ベッカム氏は、世界的なスポーツ選手であり、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドや、スペインのレアル・マドリード、米国のロサンゼルス・ギャラクシーなどのサッカーチームでプレーした経歴を持つ。ベッカム氏はまた、ユニセフ(国連児童基金)の親善大使を務めており、慈善活動などにも携わっている。

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