思考で操れる義肢や車いすの研究進む、身体まひの患者を支援 米

ジョージア工科大学で開発された脳の信号で動く車いす=Georgia Tech Brainlab提供

2012.10.18 Thu posted at 16:15 JST

(CNN) 身体がまひしたり言葉が話せなくなったりした患者のために、頭の中で考えただけで人工義肢や車いすを動かせる技術を開発する取り組みが、米国など各国で進められている。

米ジョージア工科大学頭脳研究所のメロディ・ムーア・ジャクソン所長は、脳の信号を使って義手や車いすを操作できることを実証してきた。

「エクソスケルトン」と呼ばれるリハビリロボットは、脳卒中の後遺症でまひが残った患者の手足を動かす目的で開発が進められている。使う人の脳の信号を感知して腕を動かすことができるといい、「脳から腕への新しい神経接続の確立を目指している」とジャクソン氏。さらに、脳の信号で操作できる車椅子も開発した。

同研究所が設立されたのは1998年。脳からコンピューターに信号を伝えて義肢などを操作する「ブレイン・コンピューター・インターフェース」の研究に取り組む施設は当時は5施設ほどしかなかったが、現在では約300施設に増えたという。

Georgia Tech Brainlab提供

ジャクソン氏の研究チームが脳の信号をキャッチするために使っているのは、脳に光を当てて脳の活動と酸素の状態を調べる「近赤外分光法」と呼ばれる方法。例えば言語機能を司るブローカ野と呼ばれる脳の領域は、頭の中で自分に話しかけたり、声に出さずに数を数えたりするときに活性化し、その活動に応じて酸素量が変化することが分かっている。

この仕組みを利用すれば、声に出さない思考をとらえ、頭で考えただけで発語できるシステムに応用できるという。

身体にまひをもつ人は米国だけで約600万人といわれる。さらに、意識も感覚もあって言葉を理解することはできても、動いたり話したりすることができない「閉じ込め症候群」の患者のためにも、こうした技術の応用が期待される。

ジャクソン氏によれば、日本の電機大手日立は実際この技術を応用して、閉じ込め症候群の人が「イエス」か「ノー」かを答えられる装置を開発した。

Georgia Tech Brainlab提供

同氏のチームも、血中の酸素濃度に応じて気球が膨らむ熱気球ゲームを開発。閉じ込め症候群の患者でこのゲームで競うことができるという。

ほかにも米デューク大学神経工学研究所のミゲル・ニコレリス氏らのチームは、米国にいるアカゲザルの脳の信号を日本に送り、ロボットに歩行動作をさせることに成功したと発表。2011年にはサルが仮想の腕を動かし、刺激を感じることができたと発表している。

ニコレリス氏のチームは、ブレイン・コンピューター・インターフェースの研究を推進する国際団体「ウォーク・アゲイン・プロジェクト」も運営する。

思考で車椅子などを操作するためには、脳の信号を測定するための「EEGキャップ」を頭にかぶる必要がある。現在のところ、このキャップの設定は非常に複雑だが、ジャクソン氏は、いずれ自宅で誰にでも使ってもらえるようにしたいと話している。

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