スティーブ・ジョブズ氏死去から1年、評価はどう変化したか

2012.10.06 Sat posted at 13:38 JST

(CNN) 米アップル共同創業者スティーブ・ジョブズ氏が1年前の10月5日にがんで死去した時、世界中から「天才」「先見の明のある人物」「現代のトーマス・エジソン」などの賛辞が次々と寄せられた。

しかし過去1年間に、ジョブズ氏の私生活や仕事について詳細に書かれた話題の書が多数出版され、ジョブズ氏の評価もやや変化してきた。ジョブズ氏がコンピューターや通信の分野に与えた多大な影響について異議を唱えた人はいない。しかし、多くの作家がジョブズ氏の時に冷淡で人を制御したがる性格について記したことで、ジョブズという人物の全容が徐々に明らかになってきた。

ジョブズ氏の死から19日後、ウォルター・アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ」が発売され、またたく間に米国でベストセラーとなった。

アイザックソン氏はこの本の中で、人を元気づけたと思った次の瞬間に相手の面目をつぶすというジョブズ氏の傲慢かつ非情な行動に多くのページを割いている。同書によると、ジョブズ氏はある従業員の仕事が気に入らないと、その従業員を激しく叱りつけたという。ジョブズ氏はなかなか満足しないことで有名で、人や製品を白か黒かで判断した。

またジョブズ氏は若かりしころに妊娠した恋人を捨て、娘のリサさんには冷たく、よそよそしい父親だった。ジョブズ氏の冷淡さを物語るエピソードがある。ジョブズ氏は、アップルの初期の従業員の1人にストックオプション(自社株購入権)を与えるのをかたくなに拒否した。同僚が間に入り、わずかでもいいから与えて欲しいとジョブズ氏を説得したが、ジョブズ氏は考えを変えなかった。

フォーチュン誌の編集主任アダム・ラシンスキー氏は「アイザックソン氏の著書は、世界の人々がジョブズ氏に対して抱いていたイメージに穴を開けた」と語った。

一方、企業人としてのジョブズ氏はどうか。アップルは昨年、大変な好業績を上げ、さらにアップルの株価はジョブズ氏が死去した時点から約300ドル上昇し、時価総額世界一の企業になった。ジョブズ氏がアップルにとって必要不可欠な人物だったとしたら、なぜアップルはジョブズ氏がいなくても、同氏がいたころよりも好業績を上げているのだろうか。

故ジョブズ氏

一方で、現在のアップルの成功はジョブズ氏の仕事上の評判をさらに高めるものだと言う人もいる。現在、アップルはジョブズ氏が自ら選んだチームによって運営されている。また、現在アップルが売り出している第3世代のiPadやiPhone5などは、ジョブズ氏が設計に関わった製品だ。

たしかに、アップルの株価は激しく変動し、さらに最近は最新OS「iOS6」に搭載した地図アプリの不具合をめぐる混乱などもあったが、長い目で見れば、世界中で愛されているスマートフォンやタブレットを生みだしたジョブズ氏に対する消費者の見方が大きく変わることはないだろう。恐らく、ジョブズ氏は今から数十年後には、時に暴君のように振る舞った企業幹部としてではなく、iPadやiPhoneの生みの親として人々に記憶されていることだろう。

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