ジョブズ氏死去から1年、次のスティーブ・ジョブズは現れるのか

2012.10.05 Fri posted at 15:58 JST

(CNN)  この問いに明確な答えはない。しかし米アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズが死去して以来、業界では何度もこの問いが繰り返されてきた。次のスティーブ・ジョブズになるのは誰か――。

答えは簡単には出せない。1つはっきりしているのは、1年前の10月5日に死去したジョブズ氏の、あの先見性、人を動かす力、カリスマ性、細部へのこだわりを完璧に併せ持った人物は、ハイテク業界には存在しないということだ。

ただ、ジョブズ氏が天才と称されるようになったのは晩年になってからだった。多くは同氏がハイテク業界の象徴的存在になるとは予想もしていなかった。

だが業界は空白を嫌う。無駄なこととは分かっていても、最も個性的で最も有名だった人物が去ったことによる空白を埋めるのは誰なのか、推測したがるのは人間の本質かもしれない。

候補を挙げれば賛成する人も、反対する人もいるだろう。しかも、どこかのガレージや学生寮で、次に業界を変革させる何かを生み出しているかもしれない無名の人物を含めれば、どれだけ長いリストを作っても収まり切らない。それでも検討に値する人物はいる。以下に賛否両論を含め、候補を挙げてみた。

左からジェフ・ベゾス氏、マーク・ザッカーバーグ氏、マリッサ・メイヤー氏

ジェフ・ベゾス氏(アマゾン・ドット・コム最高経営責任者=CEO)

アップルでのジョブズ氏の役職と同様、ベゾス氏はアマゾンの創業者であり、CEOだ。発表イベントでもジョブズ氏のような片鱗を見せている。昨年の「キンドル・ファイア」の発表会では、画期的な製品を洗練されたスタイルで紹介して高く評価された(ハイテク大手のグーグルとマイクロソフトは、だらだらと的を射ない発表で評判を落としている)。細部へのこだわりでもジョブズ氏のような一端を見せ(指示が細か過ぎるとの声もある)、ジョブズ氏と同様に、会社を新しい、予想外の方向へと導く意思もある。

難点: キンドルがあるとはいっても、アマゾンの中核はコンテンツ事業にある。電子書籍やデータストレージを提供する会社の経営者が、パソコンや携帯電話、音楽プレーヤーのメーカーと同じような熱狂をかき立てることができるだろうか。

マーク・ザッカーバーグ氏(フェイスブックCEO)

ジョブズ氏とスティーブ・ウォズニアック氏は、ガレージでアップルを創業した。ザッカーバーグ氏はハーバード大学の寮で創業した。インターネットの使い方を変えさせたソーシャルネットワークサービス(SNS)の経営者として、ザッカーバーグ氏は恐らく、ジョブズ氏と同様、誰もがその名を知っているハイテク業界で唯一の経営者だろう。同氏は何百万ものユーザーが使うことになる製品を生み出し、カジュアルスタイルというトレードマークさえ定着させた。ザッカーバーグ氏のフード付きスウェットは、今やジョブズ氏の黒いタートルネックと同じくらい象徴的になった。

難点: 公の場で話すことはうまくはなったが、製品の売り込みにおいて、ジョブズ氏のカリスマ性にはまだ到底追い付いていない。製品の売り込みでは中心的存在というよりは、舞台裏のアイデアマンといった存在だ。しかも、フェイスブックの株価はグーグルやアップルを追うような展開にはならなかった。

マリッサ・メイヤー氏(ヤフーCEO)

グーグル出身のメイヤー氏がシリコンバレーでどれほど好かれているかは、7月にヤフーのCEOに就任した時に、ヤフーが経営危機的な状況にあったにもかかわらず、同氏に付いて来た人数の多さが物語っている。グーグルでは20番目の社員として、クリーンなデザインから検索ページに至るまですべてを手がけ、グーグルを代表する1人になった。

難点: ヤフーは好転し始めたように見えるものの、まだまだ先は長い。もしメイヤー氏が劇的な再生を実現できれば、ほとんど誰も予想しなかったことを成し遂げることになる。もしできなかったとしても(前任の4人のCEOはすべて失敗した)、同氏の評判はそれほど傷つかないだろう。

1977年当時のスティーブ・ジョブズ氏(左)とスティーブ・ウォズニアック氏

ティム・クック氏(アップルCEO)

ジョブズ氏の後継としてアップルのCEOに就任し、アップルが打ち出す新たな革新の顔として、大きな舞台で輝かしいスポットライトを浴びる存在になった。

難点: 経歴はイノベーションとデザインよりも、むしろ実業面の経験が中心だ。今後何年もアップルのかじ取りに手腕を発揮するかもしれないが、ジョブズ氏のような先見性や製品デザインへの影響力を発揮できると予想する向きはほとんどいない。

ジョナサン・アイブ氏(アップル上級副社長)

ジョブズ氏が退任した時、クック氏ではなくアイブ氏が後継者になると予想した人も多かった。アイブ氏は工業デザイン担当上級副社長であり、「Macbook Pro」「iPod」「iPad」などの製品でクリエイティブ性を発揮した人物といわれる。英ロンドン出身でナイトの称号を持ち、ジョブズ氏と同様の強い情熱を製品に注いでいる。

難点: アイブ氏はCEOではない。ジョブズ氏のレベルに到達するためには自ら創業する必要がある。まだ45歳の同氏なら可能だ。ただ、同氏が1992年から身を置いてきたアップルを離れるとは考えにくいが、もしそうなれば興味深い。

米アップルをさまざまなヒット商品で牽引してきた故スティーブ・ジョブズ氏

イーロン・マスク氏(起業家)

南アフリカ出身で、17歳の時に両親に無断で家を出て、4年後に渡米。この時既に、12歳で開発したゲームを売り出していた。以後、パブリッシングソフトの「Zip2」を開発し(アルタビスタに3億ドルで売却)、電子決済大手のペイパルを共同創業し、初の商用電気自動車メーカー、テスラ・モーターズの創業にかかわった。それにもちろん、宇宙探査を手がけるスペースXの経営者でもある。

難点: テスラは例外として、マスク氏のプロジェクトは現在のところ、どれも消費者向け製品とは直接的な関係がない。これまでに挙げた人物に比べると、一般の知名度は低いかもしれない。しかしまだ41歳であり、この状況を変えるだけの時間はある。

セス・プリーバッチ氏(SCVNGR、レベルアップ CEO)

プリーバッチ氏はワイルドカードだ。しかし、新しい世代の若くクリエイティブな「作り手」を代表する存在であり、数年後、または数十年後にはさらに高い所に上り詰めているかもしれない。同氏は22歳にしてSCVNGRのために2000万ドルを超す資金を集めた。12歳の時に初のウェブ企業を創業し、次いでモバイル決済システムのレベルアップを設立して何百万ドルもの出資を集めている。昨年のサウス・バイ・サウスウェスト・インタラクティブで行った演説ではロックスター並みの扱いを受けた。さらに、ジョブズ氏のような定番のファッションを確立し、オレンジ色のサングラスとシャツがトレードマークになっている。

難点: 起業の世界では、どんなサクセスストーリーの影にも数え切れない失敗がある。年若いカリスマが誰でもジョブズ氏のようになりたがるとは限らず、すべてのキラーアプリが何百万ドルも何十億ドルも稼ぎ出すとは限らない。たとえ評判が良く、どれほど普及していたとしても。

ジョブズ氏、スタンフォード大学でのあの有名なスピーチ

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